遠くの野菜が食べられるわけ 野菜は畑から収穫されたあとも生きており、呼吸をして体内の糖や酸などを分解しながら生命を保っています。呼吸をすれば呼吸熱が生じて体温が上がり、体温が上がるとさらに呼吸が激しくなります。これを繰り返すと、やがて劣化が始まり、味が悪くなり栄養価も低下します。そこで考え出されたのが、収穫した野菜を直ちに冷やして体温を下げてしまう方法で、これを〈予冷〉と呼んでいます。 より“とりたて”に近く 現在では、次々に開発されるハイテクが野菜の保存にも取り入れられ、温度管理とハイテクとの組み合わせによって、生産者から消費者に、とれたてに近い野菜が届けられるのです。そのハイテクの方法の一つをご紹介しておきましょう。それは、CA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)という方法。低温に加えて、低酸素・高炭酸ガスという環境で、野菜や果物の呼吸をさらに強く抑えて、やっと生きながらえる、いわば冬眠状態で貯蔵するものです。この方法だと、普通の冷蔵庫の1.5倍から2倍近くも日持ちします。 野菜にも老化は訪れる ところで、野菜や果物には、鮮度を落とす大敵があります。それは野菜や果物自体がもつエチレンという植物ホルモンです。これを逆手にとって、果物の追熟に活用されることがあります。バナナは真っ青なものが輸入され、黄色く追熟してから市場に出されることはよく知られていますが、室に入れて追熟するときに、エチレンが使われるのです。そこで果物や野菜は、むき出しのままいっしょにおかず、冷蔵庫に保存する場合にも、袋などに別々に詰めて収納することがポイントです。 野菜の保存に適した温度は ダイコン、ホウレンソウ、ゴボウ、レタス、ハクサイなど、適温が0℃前後のものは、安心して冷蔵庫に入れてよいものです。また0℃のもののうち、タマネギ、ジャガイモなどの根菜類は、気温の低い時期には冷蔵庫ではなく台所の涼しい場所に、乾燥ぎみにして保存する方がよいのです。 一方、同じ根菜類でもサツマイモの適温は12〜13℃、冷蔵庫に入れるのはもってのほか。もっと厄介なのが、14℃が適温のショウガ。貯蔵の温度が守られず、さらに他の野菜と同じ低温のケースに陳列されて、低温障害を起こしていることがよくあります。皮の一部が黒ずんでいるものは、低温障害を起こしかけているものです。品定めをして買ったら、新聞紙にでも包んで台所の隅にころがしておくのが、ショウガのためです。 問題なのが、適温が10℃前後のキュウリやナスの場合です。キュウリやナスも、5日目までに食べ切るなら冷蔵庫に入れたほうが鮮度が保たれますし、1週間以上置く場合には10℃という条件で保存したほうがよいということです。 いずれにしても、野菜を保存するには、保存に適した温度や湿度など、野菜の性質をよく知ることが肝心といえそうです。 一石六鳥のうまい手 さまざまな種類の野菜保存の専用袋が市販されていますが、大久保先生が推薦されるのは、ふつうのポリエチレンの袋。これが一石二鳥、いえ六鳥もの働きをするのです。野菜や果物をポリ袋に詰めたら、口を輪ゴムで密封して冷蔵庫に入れます。こうすると、野菜や果物が、袋の中の酸素を吸って炭酸ガスを放出するため、袋の中は次第に低酸素・高炭酸ガス状態になります。つまり前述したCA貯蔵と同じような状態を、簡単に作り出せるのです。 ポリ袋を活用した収納は、まず何より廉価であることと、CA貯蔵に近い効果があること、取り出したりしまったりという扱いが楽なこと、野菜同士が接触して傷つかないこと、庫内が汚れないこと、そして最後にダイオキシンが出ないという大きな利点、これで計六鳥というわけです。 私たちの手に入るのは、生産、流通、販売、それぞれの段階で、さまざまな鮮度保持の工夫がされた「とれたての野菜」です。正しい保存法を知ってきちんと管理をすれば、家庭でもかなり保存はできますが“野菜はできるだけ早いうちに食べる”という意識を持つことが肝心なのは、いうまでもありません。 1998 MARCH(Vol.19) |
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