
「フードロス」という言葉に着想を得た「コスメロス」
人気ヘア&メイクアップアーティストとして絶大な支持を得ているイガリさん。そんな彼女は2022年に「コスメロス協会」を立ち上げ、話題を呼びました。
前田: 最初に、コスメロス協会について簡単にお伝えしますね。消費されていくコスメのほとんどが使用されずに廃棄されていく現状を危惧して、コスメを取り巻く環境をよくしたいという思いから2022年に立ち上げられ、コスメの廃棄問題の環境を整えるほか、コスメの使い方やアップサイクルしている企業と話し合い、コスメの在り方をコスメロス活動として発信しているボランティア団体です。この「コスメロス」という言葉は、イガリさんが作った言葉なんですか?
イガリ: そうなんです。フードロスという言葉が当たり前になって、例えばブロッコリーの茎はどうするんだとか、ここの部分は食べられるのか食べられないのかとかをみんな考えてきたけど、コスメだってロスがある。だったらフードロス(という言葉)にかけてコスメロスという言葉を作ったら、みなさんに浸透しやすいんじゃないかなと思ってコスメロス協会という名前にしました。
前田: 身近なところだと、例えばアイシャドウを使う時にお気に入りの色ばかり使ってしまって、2色くらいは使わないままのものがあったりとか、残っちゃった時にどうしようって思うことが結構あるんですよね。そういうのも集めたりすれば、また違った使い方ができるってことですよね。
イガリ: コスメの新しい価値っていうのを求めているんですけど、でもコスメを作る側としたら「みなさんが使えない色こそが重要なんだよ、本当は」と思っています。
前田: そうなんですか?
イガリ: だってそしたら、世の中(のアイシャドウは)ピンクとオレンジだけでいいわけで。けど、例えばピンクにグレーがついていたりするじゃないですか。それはグレーがあるからピンクが活きるっていう提案なんだよなぁと思うんですけど、そこがうまく伝えられてないなとは思っていて。ロスという視点で見れば、余っている色やテクスチャーがあるんですけど、そこ(の色)が重要っていうのをもっとわかってもらいたいなと。みなさんのパレットや子どもたちへのメイクレッスンも含めて、新しい価値をしっかりと見つけようと思って立ち上げましたね。
前田: 普通の人にとってコスメとの関わりって、自分が購入してそれを使うってところで終わってしまうことが多いので、その先のことまで頭の中に思い描きながらこの活動をされているのがすごく素敵だなと思いました。

そうです。元々「フードロス」という言葉がある分、みなさんに浸透しやすいかなって
イガリ: でも(前田)有紀さんは、使って底見えしてるのと底見えしないのがある(くらいちゃんとコスメを使っている)からいいじゃないですか。今何が起きているかって、写真を撮るためだけにコスメが使われて、写真を撮り終わったら次のコスメにいっちゃう人たちがいっぱいいるんです。それがSNSのいいところかもしれないけど、そのコスメもったいなくない?みたいなのがすごくあって、使う以前の問題もあったりとか。
前田: そういった美容業界の裏側の視点も持ちながらイガリさんが発信していくのは、すごく意味のあることですね。イガリさんの活動には足元にも及ばないぐらいささやかなんですけど、私も花屋で活動しているので、花屋の中で売れ残ってしまったものを寄付したり、売れ残ったものでもまだきれいなものはブーケにしてすごくお得な価格でお客様にお渡しして、集まった額で寄付活動をしたりしています。
イガリ: すごくない?私の方が足元に及ばない!でも今回イガリシノブ展をやった時にすごい数のお花をいただいたんですけど、そのお花も飾るのは1週間(がきれいな期間)って言われたから、お花屋さんを呼んで花束にしてもらい、その日のお客さんに配ったんですよ。全部持って帰ってもらって。
前田: 素敵ですね。それ、一番いい形ですね。
イガリ: その日がちょうど「メンズ×イガリシノブ展」の日で、メンズが花束を持って帰るっていう。
前田: それも素敵ですね。原宿の街に花束を持った男性があふれて。残ってしまったものをパッと捨ててしまえば簡単なんですけど、それを何かに活用して、それが誰かのうれしいにつながっていくってすごく大事なことだなって思いました。
イガリ: お花屋さんとして(前田さんは)意識しているし、私もメイクさんとして意識しているから、なんか私たち頑張ろうね!
前田: はい、頑張りましょう!

今は写真を撮るためだけにコスメが使われることもあるんです

美容業界の裏側の視点も持つイガリさんが発信されるのはすごく意味のあることですね

お腹のすいた夜にお豆のポタージュ
ゲストのためにGREEN KEWPIEを使った料理を食べていただく「みんなにうれしいGREEN KEWPIEレシピ」のコーナー。イガリさんへの2品目は、白いんげん豆の水煮とにんじんを使った、とろっと味わい深いスープです。
前田: 前回、イガリさんは夕飯を少なめにするというお話を聞きました。食べることが大好きな食いしん坊のスタッフが、夜、お腹がすいたらどうするんだろうと勝手に心配しまして、こんなメニューを考えました!題して、『お腹のすいた夜にお豆のポタージュ』です。にんじんと白いんげん豆、玉ねぎが入ったスープになります。ポタージュにしてあるので食べやすい感じがしますよね。スープに浮かんでいるのはバゲットで、ここに「植物生まれのカルボナーラ」がぬられています。では食べてみましょう。
イガリ: 「夜お腹がすいたらどうするんだろう」って心配してくれたんですか?あはは、優しい。
前田: そうなんです(笑)。ちょっととろっとした感じがお豆のスープらしいですよね。
イガリ: うーん、おいしい。優しい〜。
前田: 白いんげん豆の味がしっかりしますね。
イガリ: なんかさ、「夜お腹がすいたらどうするんだろうと思って考えたスープです」って、だし(系のあっさりした)スープが出てくるわけじゃなくて、味がちゃんとあるところがすごくうれしくなる。食べたっていう意識が生まれる。
前田: これだけ味がしっかりしていると食べ応えがありますよね。せっかくなので、このバゲットとカルボナーラのところも食べてみましょう。
イガリ: ここが一番おいしそうだよね。
前田: うーん、味が変わりますね。
イガリ: ここが一番おいしい!
前田: バゲットにほんのりにんにくの香りがして、そこに「植物生まれのカルボナーラ」がぬられていて、スープ全体の味のアクセントになりますね。
イガリ: カルボナーラって、パスタだけじゃなくてこうやって使えるんですね。合う!この(スープとバゲットの)組み合わせで、満足して睡眠力抜群って感じ。
前田: この添えられているレモンもしぼってみると味が変わりそうですね。
イガリ: いいですね。夜に豆はいいんですかね、やっぱり。
前田: ガッツリお肉を食べるよりも、体に優しく入っていく感じがしますよね。
イガリ: ガッツリお肉を食べると、若干目の下がたるんだ気持ちになる。私の個人的意見だけど、目がすごく疲れて起きたっていう気分になって。ガッツリお肉が食べたいし、焼肉も大好きだからたまに行くんだけど、そうじゃない日々の生活にはこういうのがいいよね。子どもが寝た後でもいいですね、これ。
前田: そうですね。先に子どもが寝ちゃって、まだお腹がすいてるなって時に、こういうスープがあったらうれしいですよね。
イガリ: うれしい。これ(食べてから)お風呂入って寝たい。作るの簡単なのかな?でもこれ(植物生まれのカルボナーラ)をシューってパンの上にかけるだけなのね。
前田: そうですね。バゲットに「植物生まれのカルボナーラ」をぬるだけなので、この上(バゲット)の部分だけでも楽しめますね。お客さんが来た時とかに、ちょっとにんにくと「植物生まれのカルボナーラ」をぬって、パセリをパラッとして「どうぞ」って出したら、すごくいいですよね。

これだけ味がしっかりしてると食べ応えがありますよね

スープとバゲットの組み合わせで大満足!

小さい頃からコスメに触れてもらう流れを作りたい
「コスメの新しい価値を見つけよう」と、コスメの廃棄問題をポジティブに解決すべくコスメロス協会を立ち上げられたイガリさん。後半は、コスメロス協会のユニークな活動内容についてさらに詳しく聞いていきます。
前田: さて、コスメロス協会のお話を引き続きうかがっていきます。具体的な活動について教えていただけたらうれしいです。本当に様々な活動をされていますよね。
イガリ: 最初にやったのは、コスメ回収ボックスを置いて使わなくなったコスメを必要な人にちょっとずつ分けてあげながら、基本的には子どもたちに使って(遊んで)もらおうということ。子どもたちに使ってもらえれば必然的に親たちが一緒にお絵かきをしてくれるので、あちこちのサステナブルなイベントに出たりしています。イガリシノブ展でも、しっかりと(コスメ)ブランドの方にサポートしてもらって、廃棄されるコスメをみんなで削って絵の具にして、動物の絵を描いたりしました。すごく楽しくって、子どもはもちろん楽しんでくれるんだけど、それを見ている大人たちの方が「この絵の具はこんな色なんだ」「何これ、コスメの絵?」みたいな。コスメ(が原料の絵の具)なので、絵の具の中にパールが入っていて、パールを光らせてみたりしてすごく楽しんでいましたね。
前田: 普通の絵の具にはないような光り方をしそうですもんね。
イガリ: そうそう。コスメは顔をきれいにしてくれるとか、チャーミーにしてくれるっていうのもあるんですけど、アートという可能性もしっかりと見出していきたいなと思っています。
前田: 口紅で大きなキャンバスに絵を描いた写真を見たんですけど、口紅にもいろんな色があるんだなって思いました。
イガリ: 小さい頃からコスメに触っておいてもらうと、赤とピンクの違いとかを知ることができるし、小さかった時に流行っていたコスメがこうだったとか、歴史も学んでもらえるし。自分の顔にいきなりぬって失敗すると気分が落ち込んじゃうけど、紙に描く分には何も落ち込まずどんどん描いていけるので、小さい頃から触れてもらって、そのうち顔にメイクする時に(それが)1回目にならないようにコスメを使っておくっていう流れをすごく作りたいですね。そうするとコンプレックスだったりとか、自分の顔の悩みだったりにポジティブに向かえるかなと思って、小さい子たちに一生懸命頑張って描かせています。でも、大人の方が真剣になってきますね(笑)。

楽しい場所や価値を与えられることがうれしい
前田: イガリさんにとって、コスメロス協会の活動を通じて感じるうれしいことってどんなことですか?
イガリ: (コスメロス協会の活動には)“楽しい”がすごく転がっていて、子どもたちがコスメを使って絵を描いていくのも楽しいんですけど、そのコスメを使ったことによって「ママ、このコスメの色かわいいよ」って、もう1回ママにコスメとしての価値を教えてくれるんです。そうすると、ママたちが「それ持ってたかも」「じゃあ使ってみようかな」ってなってくれるんですね。あと楽しいっていう部分では、やっぱり親と子どもの会話がすごく多くて。カップルもそうなんですけども。私は「やってみなよ」って説明だけなんだけど、(親子間では)会話がすごく生まれていて、ママが「そこはこうした方がよくない?」「ここが薄い色だからこの色にした方がいいよ」と言っていて、でも(私が)「それはママのコスメの使い方なのよ。子どもがこうやって使いたいんだからいいんじゃない?使わせてあげなよ」とか言う会話もすごく楽しいですね。やっぱりコスメが義務じゃなくて楽しい現場じゃなくちゃいけないわけだから。楽しくないと顔に落とし込んだ時も楽しくないので、楽しい場所が与えられたりとか、楽しい価値を与えられたりとか、そういうのが私にとってはすごくうれしいです。
前田: なるほど。コスメはプライベートなものって印象があったんですけど、イガリさんのお話を聞いて、もっと開かれていて自由で、いろんな人とのコミュニケーションを可能にしてくれるものなんだと知れました。

コスメを通して楽しい場所や価値を与えられるとすごくうれしい

コスメは開かれていて自由で、いろんな人とのコミュニケーションを可能にしてくれるんだと知れました
「コスメロス」という言葉はイガリさんが作ったんですか?