大人になってわかってくる味があるのはうれしいこと
『孤独のグルメ』の名物コーナー『ふらっとQusumi』では、ガッツリ食べる主人公の五郎さんに比べて、久住さんはあっさりとした野菜のメニューを選ぶことが多いように見えます。野菜好きな久住さんは、特にキャベツ愛が強いのだそう。
前田: 久住さん、野菜はお好きですか?
久住: 好きです。毎朝のようにサラダを食べるし、肉を食べる時に野菜がないと嫌ですね。キャベツがなかったらとんかつ食べないです。
前田: そんなにお好きなんですね。それ、昔からですか?
久住: そうです、昔からですね。実家のサラダも大好きだったんですよ。キャベツを中心に刻んだサラダを作っていて、母親が。にんじんときゅうりとキャベツとセロリを、全部千切りにしてごちゃごちゃっとまぜて、それにドレッシングかけたやつがすごい好きで、ボウル1つぐらい食べちゃう感じだったんですよ。小学生の高学年ぐらいからですかね。野菜って、普通は子どもは食べないですよね。
前田: そうなんですよ!うちも7歳と3歳の子がいるんですけど、本当に野菜を食べなくてすごく悩んでいるんです。こんなにおいしいのに、どうして食べてくれないのって。
久住: いやでもね、野菜って(年齢を重ねると)だんだん食べられるようになるものなんですね。それはすごく僕にとってうれしいことで、嫌いだったものが食べられるようになるとか。子どもだって、にんじんとか好きじゃないでしょ。ごぼうなんか意味わからないよね。だから、大人にならないとわからない味ってあって、それがだんだんわかっていくっていうのはすごい大きな喜びですね。
前田: 私も思い返せば春菊が子どもの頃苦手で、独特の食感があって。でも大人になって食べると、なんでこんなおいしいんだろうって。(今は)春菊大好きで、すき焼きにも欠かせないんですけど。そうやってどんどん体験をして、野菜が好きになっていくって過程があるんですね。
どんどん体験をして好きになっていくんですね
前田: 久住さんは、野菜では何が一番好きですか?
久住: キャベツが好きですね。
前田: どんな食べ方が好きですか。
久住: え〜、いろんな食べ方好きですよ。ぱっと今思い浮かぶのは、普通にざく切りにしてオリーブオイルで炒めて、クミンと塩でさっと。それだけで他に何も入れなくても、塩とクミンとオリーブオイルだけで。ご飯とかが横にあってもいいけど。
前田: 『ふらっとQusumi』に出演されたりして、キャベツがお好きだっていうのは結構知られているんですかね?
久住: そうですね。僕、前にある料理番組に出たんですが、その番組はゲスト冥利(みょうり)に尽きる番組で、なんでもいいから好きな食べ物を言うんですよ。例えば「牛肉」って言うと、スタッフが最高の牛肉を最高においしくしてくれるシェフに料理してもらうという夢のような番組で。それにゲストで呼ばれて「久住さん、何が好きですか」って言われたから「キャベツ」って言ったら閉口しちゃって。
前田: それ、ビックリしますよね。もっと違う食材が出てくるかと思いますもんね。
久住: それで、野菜料理専門のような料理店が青山にあって、そこのシェフに僕の漫画を持って行って「こういう漫画を描く人なんだけど、キャベツ料理を3品作ってほしい」って頼んだらしいんですよね。そしたら最初はキャベツを使ってこういう風にやったらいいんじゃないかとか、重ねて焼いたりするのとか色々あるじゃないですか、そんな料理を想定していたみたいなんですが、僕の漫画を読んだら「うわ〜」ってなっちゃって。この人はそういうグルメチックなもの、「チーズとベーコンと一緒に重ねてオーブンで焼いて」みたいな料理はダメなんじゃないかってものすごく悩んで、1週間ぐらい悩んでくれて、最終的においしいものを出してくれました。
前田: どんなものが出てきたか覚えていますか?
久住: 覚えています、忘れもしないですよ。まず、キャベツ丸ごと1個の一番外側(の葉)と芯を取ってよけるじゃないですか。で、柔らかい葉を茹でて、さっと冷水に冷やして、 それでチャンジャとかしょっぱい肉みたいなものをキャベツで包むんですね。それをつまようじで刺したものなんですけど、これがおいしい!ものすごくおいしいんですよ。パリッとしたところとか、キャベツの甘みとかが出て、それを中に入ってるチャンジャなどがすごく引き立ててくれて、「うわ、おいしい!」って感動したんですね。そしたら今度2品目が、さっき横によけた一番外側の葉と芯をみじん切りにして、それを肉でつないで。つなぎを肉にして。3対7で、7がキャベツの状態のものを固めて、コロッケを作ってくれて。これを塩で食べるんですけど、これがまためちゃくちゃおいしくて!
前田: なんか歯ごたえもありそうですね。
久住: あります、あります。食べると「本当にこれキャベツが7割で肉が3割なの?」っていうぐらいおいしいんですよね。そっとビールなんか出してくれてね、最高なんですよ。で、3品目が柔らかい葉を使った後の、残ったキャベツを寸胴鍋で鶏がらスープの中に入れてコトコト一晩煮て、そのスープをおこげのご飯にかけるんです。
前田: うわー、おいしそう。
久住: 柚子胡椒をちょっとつけて。もうめちゃくちゃにおいしいんですよ!キャベツのおいしさがぎゅーって凝縮されている感じで。もう感激して『キャベツになりたい』って曲まで作っちゃった。
前田: あはは。そうですよね、ミュージシャンでもいらっしゃるので。
久住: ちゃんとレコーディングもしましたよ(笑)。
野菜でいうと何が一番好きですか?
キャベツが好きですね。忘れもしない食体験があります
恋するキャベツからの辛口ラブレター
ゲストのためにGREEN KEWPIEを使った料理を食べていただく「みんなにうれしいGREEN KEWPIEレシピ」のコーナー。久住さんへの2品目は、大好きなキャベツを使った、晩酌のお供にもピッタリな1品です。
前田: 久住さんへの2品目は、大好きだというキャベツのお料理を用意しました。題して、『恋するキャベツからの辛口ラブレター』です。
久住: あんまりおいしそうな名前じゃないね(笑)。あ、でもおいしい!名前よりも全然おいしい!
前田: おいしいですね。こちらキャベツを茹でて、「植物生まれのマヨネーズタイプ」であえて、具ありラー油でピリ辛な味付けにしています。ピリ辛なのが、またキャベツと合いますね。
久住:合いますね。うんうん、おいしい。キャベツを炒める時に、さっきはクミンって言ったけど、クミンじゃなくて鷹の爪を入れる時もあります。
前田: ちょっとピリ辛になると大人っぽい感じになりますね。
久住: これはマヨネーズタイプを使っただけなんですか?
前田: そうです。「植物生まれのマヨネーズタイプ」であえてあります。このGREEN KEWPIEのマヨネーズタイプは、後味がさらっとした感じがするので具ありのラー油との相性もすごく良くて、おつまみとしてもピッタリですよね。暑い夏の日にビールと一緒に食べたいですね。
久住: いいですね、最高ですね。これ、このぐらい(山盛り)あってもいいな。
暑い夏の日にビールと一緒に食べたいですね
最高ですね。このぐらい(山盛り)あってもいいな
相手のおいしさを引き出してあげる大根はエライ!
キャベツを題材に曲を作ったという久住さんは、大根を題材に絵本も描いていらっしゃいます。絵本『大根はエライ』は、2019年に第24回日本絵本賞を受賞。食材としての優秀さだけでなく、大根の謙虚な姿勢に独自の美徳を感じるのだとか。
前田: 野菜好きの久住さんですが、なんと野菜を主役にした絵本も描いていらっしゃいます。日本絵本賞を受賞した『大根はエライ』という作品です。(イラストが)可愛いですね。表紙に困った顔をした大根がこう笑っているようなイラストがあるんですが、大根を主役にしているところがすごくいいなと思いました。
久住: ある時気づいたんですよ。大根ってものすごくいろんな形になっているなと思って。それは、切り干し大根食べた時に、よくこんなものを作ったなって。大根おろしの大根とまるで違うじゃないですか。そういえば、大根おろしもあるし、おでんの大根もあるし、大根のサラダもあるし、大根っていっぱい食べ方があって、いっぱい食べているのに、そういう感じが全然しないなって思ったんです。むしろ買い物なんかに行くと「重い」とか言われちゃったりしてね。
前田: でも、あると便利なんですよね。改めて言われてみれば、大根っていろんなところに使われているなっていうのが、この本を読んですごく感じられました。
前田: 大根って野菜として見てもいろんな食材と調和するじゃないですか。NGがないっていうか、本当に全てと相性いいっていうのはすごい。
久住: しかも大抵、相手を引き立てているんだよね。大根おろしなんて大体そうだけど、おでんの大根なんていうのは、もう本当に他のものの味を自分に染みさせて、その人たちと一緒においしくなるみたいなところがありますよね。
前田: 対立せずに、引き立てて仲良くなっていくっていうこの大根の姿勢がいいなっていう風に感じてしまいました。
久住: 仲良くなるっていうようなアプローチすらないと思いませんか?もうなんか、おいしくしてあげようっていうだけで、仲良くっていう感じも(しない)。
前田: 自分の意思が強くある感じじゃなくて、ただ存在するだけで相手と調和する。
久住: 相手のおいしさを引き出してあげる。
前田: いやー、そんな人になりたいですね。
久住: そうですね。優しい感じじゃないですか。人間でいったら、おとなしいんだけど、教室の窓のところがきれいにしてあって、「これ誰がやったの?」って言うと、「なんか帰りに大根がやっていたよ」っていう、なんかそういう(笑)。自分が何か言うんじゃなくて、やっていたみたいなね。そういうところがあるなって。
大根って相手のおいしさをただ引き出してあげているんだよね
そんな人になりたいですね
知れば知るほど「大根っていいやつじゃん」とわかるのがうれしかった
さりげない優しさや思いやりを持つ大根に、「そんな人になりたい!」とリスペクトを感じる前田さん。久住さんも、絵本を制作するうちに大根の魅力をどんどん再発見していったそうです。
前田: 大根みたいな人がたくさんいたら、社会はどうなりますかね。
久住: けんかのない社会になるんじゃないですかね?争いのないような。もっといろんな町と町とか、国と国とかの関係も相手の良さを引き立て合うようにすれば、仲良くなれるんじゃないですかね。
前田: そうですね。キャベツだったり大根だったり、一見主役になってないような野菜たちが、実は周りの野菜たちや食材を引き立てていて、その懐の広さってものを本当に実感しました。
久住: そうですか。そう思ってもらえるとすごいうれしいですね。やっぱりこの大根の良さに自分で気づいて、知れば知るほど、大根っていいやつじゃんってわかってくるのが僕はうれしかったですね。
一見主役になっていない野菜たちの懐の広さを実感しました
大根の良さに気づいて、知れば知るほどいいやつだってわかるのがうれしかったです
野菜ってだんだん食べられるようになるものなんですよね