内臓脂肪
の話
糖質や脂質などは、私たちの身体を動かすために欠かせないエネルギー源です。しかし、摂り過ぎてしまったエネルギーは「体脂肪」として体内に蓄えられています。
そんな体脂肪は、「皮下脂肪」と「内臓脂肪」に分けられ、それぞれ違った特徴を持っています。
目 次
・皮下脂肪と内臓脂肪 ・内臓脂肪のデメリット ・内臓脂肪は腹囲とBMIを目安に ・内臓脂肪を減らすには?皮下脂肪は
主に皮膚の下についた脂肪の
ことです。
皮下脂肪型肥満は女性に比較的多くみられ、お尻や太ももなど下半身に脂肪がつきやすい傾向があります。外見からもわかりやすく、その体型から「洋ナシ型肥満」とも呼ばれます。
皮下脂肪は
一度ついてしまうと
なかなか減らしにくい
という特徴があります。
「皮下脂肪」の特徴
皮膚の下に
つく
下半身に
つきやすい
お腹をつまんで
掴める
女性に
多い
内臓脂肪は
お腹の内臓周りについた脂肪
のことです。
内臓脂肪型肥満は男性に比較的多くみられ、下半身よりもウエスト周りが大きくなる特徴があります。その体型から「リンゴ型肥満」とも呼ばれますが、内臓周りに脂肪がつくので、見た目からはわかりにくい場合もあります。
内臓脂肪は
皮下脂肪と比べると
身体につきやすく 減らしやすい
脂肪であると考えられています。
「内臓脂肪」の特徴
内臓の周りに
つく
お腹周りが
ぽっこり出る
お腹をつまんで
掴めない
男性に
多い
(参考)
1) 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪型肥満」「皮下脂肪型肥満」「肥満と健康」
2) 日生下 他, 臨床科学, 2006; 35 : 206-213
内臓脂肪のデメリット
「お腹周りが気になる…」「体脂肪が増えてきた…」。
内臓脂肪がつくと、身体にどんなデメリットがあるのでしょうか?
BMIが同じでも、どこに脂肪がついているかで健康への影響は大きく異なってきます。特に健康への影響が大きいのは、お腹周りにつく「内臓脂肪」です。内臓脂肪が多くつくと、血糖値や血圧などの健康状態に影響が出てきます。
一方で、皮下脂肪が多くついても、内臓脂肪が少ない場合には、実はこうした健康への影響はあまりありません。
しかし、内臓脂肪には「減らしやすい」という特徴があります。日ごろの生活習慣を見直すことで内臓脂肪を減らし、健康を維持しましょう。
(参考)
1) 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
内臓脂肪は
腹囲とBMIを目安に
内臓脂肪が増えると、身体にはさまざまなデメリットがありますが、
外見から内臓脂肪が増えたと判断することは難しいと言われています。
手遅れにならないよう、普段の生活の中で気をつけるにはどうすればよいでしょうか?
腹囲
内臓脂肪を正確に把握するためには、腹部のCTスキャンやMRI検査を行う必要があります。
しかし、この方法は普段の生活の中では簡単に行うことができません。
そこで代わりに活用されるのが、内臓脂肪の多さを反映していると考えられ、すぐに測れる指標である「腹囲(ウエスト周囲)」です。
内臓脂肪が多いと考えられる腹囲の目安となる値は、男性85cm以上、女性90cm以上。
男性と女性で目安値が異なるのは、脂肪のつき方が男女で異なるためです。
内臓脂肪型肥満チェック
(目安)
この腹囲の目安値は、腹部をCTスキャンで測定した際の内臓脂肪面積100㎠に相当すると言われており、内臓脂肪面積が100㎠を超えると身体にさまざまな不調が生じることがわかっています。そのため、腹囲の目安値はメタボリックシンドロームの基準にもなっています。
BMI
内臓脂肪を自分で把握できるもう1つの指標に、「BMI」があります。BMIとは、体重(kg)÷[身長(m)]2で求められる値で、肥満ややせを判定するために国際的に用いられている指標です。
日本ではBMIが18.5 未満で「やせ」、18.5~25.0 で「標準」、25.0 以上で「肥満」と考えられています。
BMIが25.0 以上で、腹囲が男性85cm以上/女性90cm以上ある場合、内臓脂肪と関連のある上半身肥満の疑いがあるとされ、BMIと内臓脂肪には一定の関連が報告されています。
一方、BMIが低いにも関わらず内臓脂肪が多い隠れ肥満の方も存在しています。そのため、内臓脂肪を把握するには、BMIだけでなく、必ず腹囲も測定することが重要です。
食べ過ぎや運動不足などの生活習慣の乱れ、加齢などにより、内臓脂肪は増えていきます。
手軽に測れる腹囲とBMIを目安に、内臓脂肪の管理を普段から行っていきましょう。
(参考)
1) 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2020年度版
2) 厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査
内臓脂肪を減らすには?
内臓脂肪を減らして健康的な生活を送るためには、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか?
ポイントは2つ、「食事」と「運動」です。
内臓脂肪を減らすための食習慣
内臓脂肪を減らすために適正な食事の量は最も重要です。摂り過ぎたエネルギーは、体内で体脂肪となり蓄えられていきます。また、食事の時間が不規則なこと、就寝前に食事をすることも、内臓脂肪を増やす要因となります。普段の生活の中で、生活リズムを整え、食べ過ぎないようにすることを心がけましょう。
一方、積極的に食べてほしいのは野菜です。野菜類に多く含まれている食物繊維は、内臓脂肪を減らすのに効果的です。しかし、日本人の1日の野菜の摂取量は、推奨量より約70g少ないと言われています。
いつもの食事にサラダを1皿プラスして不足した野菜を補うとともに、サラダにかけるマヨネーズやドレッシングに、内臓脂肪を減らす機能がある特定保健用食品や、機能性関与成分を含む機能性表示食品を選ぶことも1つです。毎日の食卓のなかで、おいしくバランスのよい食生活をめざしましょう。
(参考)
1) 厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査
内臓脂肪を減らす
食事のポイント
内臓脂肪を減らすための運動
食生活の改善とともに、適度な運動を取り入れることも重要です。ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、継続的に実施することで筋肉を動かすエネルギーをつくり出し、脂肪を燃焼させると言われています。
運動というと大がかりなことを想像してしまいますが、1日あたり約1,800歩多く歩くようにしたら内臓脂肪が低下したという報告があります。1,800歩は距離にするとおよそ1km、時間にすると20分ほどです。
まずは、日常の中でできることから始めてみましょう。
(参考)
1) 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2020年度版
2) 田中 茂穂, 大河原 一憲, 宮地 元彦, 高田 和子, 田畑 泉. メタボリックシンドローム改善に必要な運動量. 体力科学. 2008; 57: 27.
宇都宮 一典先生
東京慈恵会医科大学 名誉教授
医療法人財団慈生会野村病院 常勤顧問
内臓脂肪の増加は、食や運動を含む生活習慣が大きく影響していますが、そのまま放置すると重大な疾病の危険因子となる可能性があります。本サイトには健康的な食生活・運動習慣のポイントが紹介されていますので、ぜひ参考にして日ごろの生活習慣を見直していただければと思います。