子どもの成長期を支える
栄養素をカバーする学校給食の献立づくり

学校生活の楽しみの一つでもある給食。とくに成長期の子どもたちの体を支える重要な栄養素は、学校給食が重視すべき点でしょう。
子どもたちの成長期を任された学校栄養士として、献立を考える際に重要な点をこちらでおさらいしてみましょう。

最も重要なのはバランス

献立を考える際に最も重視されるのがバランス。そこで役立つのが、「食事バランスガイド」です。「何を」「どれだけ」食べるべきか、イラストを活用して作られているため、文字で見るよりもわかりやすく必要な情報を取り込めます。

「食事バランスガイド」は、1日に必要とする食事の適切な内容を主食、副菜、主菜の順に、コマのイラストに当てはめて表現されています。
これは食育にも用いることができ、たとえば各料理をバランスよく食べるとコマはバランスがとれ回転できますが、もし食事のバランスが崩れてしまうとどうでしょう。コマもバランスを失い、回転することができなくなります。

この様子を「食事バランスガイド」を用いて子どもたちに説明すると、いかに食事は各料理や食材をとるのが重要なのかを理解してもらいやすいです。

学校給食の献立を考える際も、コマの上の層あるいは下の層から順にメニューを考えていくと良いでしょう。
忘れがちなのが、コマの軸の位置に当たる水やお茶といった水分です。コマを回すにも、バランスをとるにも軸は必要。献立を考える際も、栄養素のバランスとともに水分が少ないメニューとなっていないか確認してみてください。

カルシウムや鉄の不足

厚生労働省が平成27年に行った国民健康・栄養調査でも、現代では大人だけでなく子どもたちもカルシウムや鉄が不足傾向にあるという事実が示されています。

カルシウムは骨や歯を構成する成分の主な存在であり、成長期の子どもには十分に摂取してもらいたい栄養素です。それだけではなく、筋肉の収縮やイライラを鎮める心の安定などにも役立ち、骨や歯に留まらず全身の健康に不可欠です。

リン酸、シュウ酸、フィチン酸、多量の食物繊維を同時に摂取すると、カルシウムの吸収を阻害するため、献立づくりの際は注意しなくてはなりません。
カルシウム吸収に必要な乳糖やマグネシウムを加えるなどの対策をとりましょう。

鉄も同様で、全身の健康に必要な栄養素です。血液に含まれており、他の栄養素を全身に運ぶ役割の一端を担っています。

乳・乳製品、魚介類、大豆製品、種実塁、藻類などでカルシウムを、豆類、種実類、藻類、肉類などで鉄を摂取できるよう、献立も意識してみましょう。

鉄はヘム鉄と非ヘム鉄の2種に分かれ、非ヘム鉄は野菜でも摂取できます。しかし吸収率が悪く、理想的な量を摂取することは難しいことから、ヘム鉄である肉類などからとれる鉄の方が効率的です。

とはいえ、鉄だけを多く取り入れても効率よい吸収にはつながりません。鉄をきちんと体内ではたらかせるには、亜鉛や銅といったその他のミネラルも必要です。
鉄を体内のあらゆる所に運ぶには銅が必要であり、鉄が含まれる血液をつくるヘモグロビンの合成に不可欠です。どちらかが不足した場合、鉄をいくら多く摂取してもきちんと吸収されることはありません。

吸収を阻害する組み合わせと、組み合わせる方が効率のよい吸収につながる栄養素についても加味し、献立を作っていくと、自ずとメニューの種類も増えていきます。

塩分と脂質の取り過ぎ

同じく厚生労働省の国民健康・栄養調査の平成27年調査データでは、過剰摂取な栄養として食塩が当てはまっていました。加えて、目標量内に収まっていながら、その後半の量にまで迫っているのが脂質です。
この2点から、食の欧米化が影響していると考えられます。

食塩の過剰摂取および脂質の摂取量増加という現状を改善するためには、和食のメリットを見直すことが大切です。
魚介類や野菜が多く、米食がメインとなる和食は、大豆なども献立に取り入れていることから、バランスの良い献立づくりに向いています。


まとめ

献立づくりは栄養素ばかりに目を向けがちですが、それでは料理として何を選ぶべきか見えにくい難点があります。
そこで栄養バランスを図化した「食事バランスガイド」が役立ちます。コマ状になったイラストを参考に料理単位で考えていくと、「何を」「どれだけ」メニューに取り入れるべきか整理できます。

また、現代の子どもの栄養摂取状況も忘れてはなりません。厚生労働省の調査によると、食塩が過剰摂取ぎみで、脂質も目標量の限界量にまで迫っています。
一方でカルシウムや鉄は不足傾向にあり、これらを補えるような給食が必要です。

現代の状況を踏まえ、昔ながらの和食のバランスの良いメニューを参考に、現代の子どもの成長期を支える献立づくりをしましょう。
また、「食事バランスガイド」では、菓子やジュースといった嗜好品はコマの紐として表現されています。完全に絶たせるのではなく、適度に楽しむように抑えることが大切。

適切な嗜好品はコマ本体を回す、バランスの良い食事をとらせるきっかけづくりにもなります。

2017/02/23時点