給食でできる地産地消は野菜だけじゃない!
まだまだ工夫できる可能性

地産地消がブームです。平成22年には六次産業化法が公布され、日本では国をあげて地産地消に取り組んでいます。地産地消といえば地場産の野菜を使うのが一般的ですが、最近では地産地消の範囲が拡大しています。各自治体の地産地消の取り組みから、地産地消の更なる可能性を探っていきましょう。

地産地消のメリットと課題

まず、地産地消にはどのような意義・目的があるのでしょうか。地産地消の最終目的は「生産者の顔が見える関係が出来ることで地域の活性化を図る」ということです。また、意義として「地域の活性化」「消費者の安心な食生活の確保」「生産者と消費者との信頼関係創り」「伝統食や文化の浸透」等が挙げられます。

学校給食で地産地消を進めると、地域住民や保護者の目により、生産者は生産物に対して安全・品質をより意識するようになります。生産者の顔を知ることで、住民の地域への関心が促進され、地域文化の認知や年中行事の参加も促されるでしょう。このような地域活性化だけでなく、生産者側としても、一般向けに出荷できない規格外の商品も、消費者に提供できるようにもなり、食材の有効活用の場が増えます。

しかし、学校給食に地産地消として取り入れるには「長期休み、週末・祝日の供給がない」「輸送のコスト」等を考えると、生産者側の負担が大きくなってしまうのではないか、という不安もあります。これに対し、地方自治体が教育委員会や農協などの仲介をすることで対策が可能です。収穫の調整や価格交渉が行えることもあり、実施できれば生産者側の負担を減らすことが出来ます。加えて、食材の配送を担うことで地域地産を目指す自治体もあるようです。

ただ、課題は他にも考えられます。都市部地域では需要が大きく、供給が追いつかない。農山村地域では反対に供給力が大きすぎるというミスマッチも起こっています。この課題については、次の章で実際の自治体を例にとってどのように克服しているのかご紹介します。

給食での地産地消を工夫している自治体

実際に地場製品を給食に取り入れるため、さまざまな工夫をしている自治体の具体例をご紹介します。

大阪市・埼玉県の都市部地域と、農山村地域の岩手県では、どのように地場産の製品を取り入れる工夫をされたのでしょうか?

都市型地域で給食での地産地消を工夫している自治体の例~大阪市

大阪市では前述のような課題を以下のように対応することによって、給食に地産地消を取り入れることに成功しました。
まず、地産地消に関して教育委員に農政部局や農業委員会が協力することで、より専門的かつ実様な知識・情報を提供できるシステムを構築しました。
また、教育委員会でも、献立を地場産の「旬」の時期に合わせるなど、生産者に配慮した献立の作成努力をしました。
共同購入・単独調理方式ではなく、一部調理場に実際の生産者を採用したりと細かい対応をすることで、より地産地消を取り入れる工夫をしています。

価格交渉や材料調達は、農政部局や農協が協力して行うことで地産地消を取り入れるのに成功しています。また、欠品対応も農政部局や農協が行い、大きな需要に対応しています。

大阪市では、需要と供給バランスなどこまかな課題を官民一体となって克服することによって、地産地消を学校給食に取り入れることに成功しました。

都市型地域で給食での地産地消を工夫している自治体の例~埼玉県

埼玉県では、大阪市とは違う方法で都市型地域の給食に地産地消を取り入れる課題を克服しています。たとえば、埼玉県では「県単位」で地場産の食品を仕入れることで地場産の食品を安く大量に確保しています。県単位で地場産の食材を大量に買付することで、生産者からの納品もスムーズになりました。
また、大量に買い付けた地場産の食材を加工し、欠品対策をすることに成功しました。県単位で大量に地場産の食材を確保することで、加工業者も学校給食のために地場産の食材を加工しやすくなるメリットもあります。このような事情から埼玉県では、地場産野菜を冷凍加工したりすることで地産地消を給食に取り込むことに成功しています。

農山村地域で給食での地産地消を工夫している自治体の例~岩手県

岩手県では地産地消を促進するために、「いわておもしろ地産地消大賞」として、地産地消に積極的に取り組んだ団体や企業や個人を表彰しています。
また、岩手県産素材を使って健康に良い素材を使った健康パンを開発しています。たとえば地場産の米を「米粉」に加工して米粉パンを給食に導入するなどと、「米」の供給力があるからこその地産地消に取り組んでいます。

このように、財政や組織力の強さを活用することでその土地の特産物など、都市部型・農山村型それぞれの地域の強みを生かした工夫ができるでしょう。

地産地消給食等メニューコンテスト受賞メニュー

農林水産省では給食での地産地消を推進するために、メニューコンテストを実施しています。これまでのコンテストで選ばれたメニューをご紹介します。

福井県・小浜市 学食バイキング

福井県小浜市にある福井県立大学の学食で、地場産の食材をふんだんに使ったバイキング形式のランチを提供しました。毎日地元市場の規格外品を買い取りしてからメニューを決めることで、コストダウンとバラエティー豊かな献立を提供しました。

福井県・越前町「えち膳の日」献立

有機玄米ご飯、牛乳、イカゲソから揚げゆかり風味、小松菜とわかめの梅肉あえ、にゅうカレー、きゅうちゃん漬け、いちごゼリー
食材数25、うち地場産数18

越前漁港で水揚げされたスルメイカなど、地場産の食材を使った給食を提供しています。越前町は県内トップの地場産食材を使用している地域です。


まとめ

献立や予算など、制限の多い給食で地産地消食材を取り入れていくのは多くの困難を伴います。しかし、上記の例のように欠品対策に地場産食材を加工して確保したり、学校給食関係者だけではなく、農協や地元の市場と提携して地場産食材を調達したりと様々な工夫をすることで、その困難も解決していくことができるのです。未来を担う子供たちが地元の食材に親しむことができるよう、努力を続けていきましょう。

2017/03/30時点