小学校給食のサイクルメニューで
苦手食材の克服を

食への関心が高まっている現在、学校栄養士(以降栄養士と記載)の業務も給食管理にととまらず食育授業やアレルギー対応など多岐にわたっています。学校給食の献立形式にサイクルメニューを導入することにより、給食管理の時間を短縮し、その他の業務にバランスよく取り組むことができるでしょう。

学校給食における栄養士の仕事の変化

従来、学校給食において栄養士が求められる仕事の多くは栄養計算や献立作成などの給食管理でした。しかし、平成17年に食育基本法が制定されたのを皮切りに今まで行われていなかった食の教育に対し関心が高まりました。その結果食育授業が行われる学校が増加し、教育職員免許法に定める単位を修得した栄養士として、栄養教諭の存在が重要視されるようになりました。
栄養士もしくは管理栄養士の資格を持つ人が改めて大学等で栄養教諭の免許を取得し、学校で食育授業を行うことが求められることがますます増えています。
栄養教諭ではない栄養士も、食育授業を行う栄養教諭や学級担任のサポート役として授業に加わることがあります。
また、ここ5年でアレルギーを持った児童が2倍に増加した背景から、アレルギーを持った子供の対応も増加してきています。このように栄養士は従来の仕事内容より仕事の幅が広がってきているのです。
そこで、サイクルメニューを導入することにより、栄養士の仕事の負担を減らし、より幅広い業務に目を向けることができるのではないかといわれています。

給食の献立形式

多くの小学校での給食の形式はサイクルメニューを採用しています。このサイクルメニューとは、一定期間のメニューを決めておき、そのメニューを2週間から1ヶ月の間などの一定期間で繰り返して提供する形式です。サイクルメニューは献立作成の手間を減らし、作業効率を向上させ、給食経営を効率的に行うことができると言われています。そのため、小学校以外にも病院や保育園などの多くの給食施設で採用されています。
小学校では、サイクルメニューは子供たちが食事に飽きないように、完全に同じ献立が繰り返されるのではなく、料理の組み合わせを変えて提供されることが多くなっています。

サイクルメニューのできること

どうしてサイクルメニューが多くの小学校で採用されているのでしょうか?それは、サイクルメニューを採用することで多くの利点が得られるためです。そこで今回は、サイクルメニューに変更して得られる3つの利点をご紹介します。

1.食わず嫌いや嫌いな食材を克服できる

子供は食経験が少なく、はじめてみる食材や料理などは警戒して手を付けないことがあります。また、味覚も発達の途中のため何度も繰り返して食べ、食経験を積む必要のある「苦味」「酸味」などの味は特に苦手意識が強くでるようです。そのため、「苦味」「酸味」の味を持つピーマンやトマトなどの野菜を食べないことが多いのです。
サイクルメニューでは、同じ食品や料理が周期的に提供されるため初めて給食が提供されたときに食べられなかった食品や料理と繰り返し出会うことになります。食べたことのない食材や料理は繰り返し出会ううちに慣れ、みんなが食べているからと試しに食べて、おいしく感じるようになっていきます。「苦味」「酸味」などの繰り返しの食経験が必要な味も、何度も食べることにより「苦味」「酸味」の味を学習しておいしく感じる効果もあります。このように、何度も同じ料理を繰り返すサイクルメニューは子供の好き嫌いをなくせる可能性がある、というメリットがあるのです。

2.生活習慣病のリスクを下げる

さらに、給食では塩分量などを栄養士が計算して給食を作っているため、基本的には給食は比較的薄味になっています。最初は薄味に違和感を覚える子供もいるようですが、繰り返し食べることにより、薄味になれ、食材本来の味を感じられるようになります。こうして、塩分を控えることが習慣になりやすくなり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症のリスクを下げることができます。

3.栄養士の仕事の負担を減少

小学校の給食をサイクルメニューとすることにより献立作成の時間が減り、作業効率を上げることにもつながります。確かに毎日違うメニューを提供できれば、様々な食品に触れることができ、新たな食の体験ができます。しかしながら、ほとんどの小学校では栄養士の配置は1名~少人数であることが多いようです。そのため給食管理から保護者への対応、授業など幅広く仕事を抱えられている場合は、サイクルメニューによる給食管理の効率化が大切になってくるのは無いでしょうか。
また、小学校の給食は衛生について非常に厳しく管理しており、新しいメニューを取り入れるのにも給食を作る動線や調理方法を考える必要があります。また、アレルギーを持った児童のために代替え食や除去食についても考える必要があります。そのため、気軽に新しいメニューを導入することが難しく、日替わりの給食を作るのは困難な現状があります。


まとめ

ご紹介したようにサイクルメニューは一定の期間で同じ献立が繰り返されるとういう性質だけでなく、繰り返して同じ料理や食材を食べることにより味を学習して苦手な食材を克服できる可能性を高める利点をもっています。その他にも、栄養士の負担を減らし、空いた時間で食育の授業をすることや、保護者向けの給食便りなどの配布物の内容を充実させることができます。サイクルメニューにはこのように利点がたくさんあります。

2017/04/27時点