語れる一皿、パワーサラダは
特別なスペシャリテ

サラダは通常、副菜として提供されることが多いですが、このところ、肉や魚、卵などを野菜と一緒に“主食感覚”で食べるサラダが注目を集め始めました。これは“パワーサラダ”と呼ばれるもので、野菜、たんぱく質食材、フルーツ、そしてトッピングを組み合わせてつくる栄養満点のサラダです。一皿で食物繊維の他、ビタミン、ミネラル、たんぱく質など、さまざまな栄養素を効率よく摂取することをサポートすることから、アメリカ西海岸やニューヨークで人気になっています。

さて、この新しい食スタイルを、日本の外食店はどのように取り入れるべきでしょうか?ただ単に「野菜+フルーツ+たんぱく質+トッピング」を組み合わせただけでは、従来のボリュームたっぷりの副菜サラダとの違いを打ち出すのは難しいでしょう。そこで、シェフのこだわりを活かし、明確なテーマを持たせたパワーサラダを店のスペシャリテとして位置づけるのはどうでしょうか。そのテーマによって“主食感覚”というコンセプトをお客様に明確に伝え、これまでにない魅力的な一皿に仕上げることができるはずです。
それでは、BLUE NOTE JAPANエグゼクティブシェフの長澤さんに“パワーサラダ”を試作していただき、魅力的な一皿に仕上げるポイントを伺ってみました。

  • 取材協力店:
  • BLUE NOTE PLACE

「BLUE NOTE PLACE」は、食と音楽を融合させたダイニングとして恵比寿ガーデンプレイスに2022年にオープン。吹き抜け2階建て180席の広く優雅な空間では、ランチ、カフェ、ディナー、バーとさまざまな食のシーンを提供してくれる。自社農園で育てる多彩な旬の野菜が一年を通してメニューで提供されディナータイムには食事とともに、音楽のライブ演奏やDJが楽しめる。

  • シェフ:
  • BLUE NOTE JAPAN エグゼクティブシェフ 長澤 宜久さん

91年に渡仏。ミシュラン三ツ星「ラ・コートドール」他、レストランからブラッスリー、カフェまでフランス各地方の名店で経験を積む。帰国後、国内のレストランでキャリアを重ね2001年に「アディング・ブルー」(南青山)のシェフに就任。2007年に丸の内の「resonance」のシェフに。2008年ソムリエ資格取得。2013年にブルーノートグループのシニアシェフに就任。現在は同グループのエグゼクティブシェフとして活躍中。

色がストーリーを語る、
特別なパワーサラダ

“パワーサラダ”を主食として提供するためには、あえてお客様に選んでいただける、他のメニューに負けない魅力が必要です。そのためには、パワーサラダにテーマを決めて、語れる一皿にすることが重要です。つまり、パワーサラダもつくり手のこだわりを感じるスペシャリテなのです。

赤のパワーサラダ

※2~3人前でシェアするメインメニューとして

たとえば、このパワーサラダのテーマは〝赤のパワーサラダ〟です。
ニンジン、ドライトマト、イチゴ、ざくろ、さくらんぼなど〝赤〟い素材をビネガーで一瞬軽くマリネして器に盛ります。
さらにスノーマン レンズ豆ともち麦のタブレ、カシューナッツ、赤身の鹿肉を低温調理してスライスしたもの、そしてサニーレタス、アマランサスを加え、そこにキユーピー  コクとうま味のおろし野菜ドレッシングをかけました。
このドレッシングは、すりおろした野菜とフルーツが何種類も混ざり合って、まさに野菜を野菜で食べる感じですね。一番下にはドレッシングと具材との絡みをよくするために、〝赤〟いトマトジュースとオリーブオイルを少量敷いています。これをかき混ぜて2~3人でシェアして召し上がっていただきます。
レストランで提供するパワーサラダは、組み合わせの要素が揃っていればいいのではなく、メインの一皿にこだわるように、素材にも力が必要です。野菜とフルーツはできるだけ旬の盛りのものを、たんぱく質には脂の少ない北海道で獲れた鹿の赤身のロースを使い、〝赤〟のイメージでまとめました。

グリーン野菜のパワーサラダ

※2~3人前でシェアするメインメニューとして

次のパワーサラダのテーマは、〝緑〟です。コールスローにしたキャベツにほしえぬ キヌアミックス、鶏ハム、青リンゴ、アスパラガス、グリーンピース、グリーンピースのスプラウト、キュウリ、アボカド、そしてフルーツにはグロゼイユを加え、圧倒的な緑色で旬の野菜の勢いある力を表現しました。
キャベツはコールスローにすることで食感を変え、かき混ぜて食べた時に食感のコントラストが楽しめます。

満足感とヘルシー、
2つの要素の両立が人気のカギ

ヘルシーパワーサラダ

※1人前のランチメニューとしてテイクアウト

このBOXに入ったパワーサラダのテーマは、〝満足を詰め込む〟です。このメニューは、実際にうちのお店で販売したものです。カロリーはそれほど高くなく栄養がとれるヘルシーな素材を多彩に詰め込んだテイクアウトのランチメニューです。サラダの素材はとても多彩で、私どもの農園でつくっているわさび菜やからし菜、ケール、水菜、ブロッコリー、トマトなどの野菜と、リンゴ、鶏肉のそぼろ、シュリンプボール、そして、ほしえぬ ミックスビーンズです。
ランチタイムに外のスタンドで販売してみると、女性のお客様にとても評判がよくて1日あたり10食以上売れます。「ドレッシングが凄くおいしい!」とおっしゃる方が多く、パワーサラダには濃厚な味のドレッシングが合うのでしょう。
このように〝ヘルシーパワーサラダ〟が人気のテイクアウトメニューになりました。2週間ごとに組み合わせる食材を替えて、次はどんな“パワーサラダ”だろうと、ランチを楽しみにしていただけるようにしています。
このように〝ヘルシーパワーサラダ〟が人気のテイクアウトメニューになりました。

盛り付け方の工夫で
パワーサラダが魅力的なスペシャリテに

クレープパワーサラダ

※1人前のメインメニューとして、またはラップメニューに仕立ててテイクアウトにも

次のパワーサラダのテーマは、〝旬を包む〟です。具材は小松菜、インゲン、じゃがいも、紅芯大根、ニンジンをソテーしたもの、紫キャベツ、ブルーベリー、ローストポーク、ほしえぬ レッドキドニーです。さっぱり食べられるように大葉をピューレにして、野菜全部に和えています。
これをココナッツ、卵、小麦粉で焼いたクレープ生地で包んだ1人前の〝クレープパワーサラダ〟です。くるくると巻いてスリーブに入れれば、ワンハンドで食べられるラップサラダに仕上げることもでき、テイクアウトメニューにすることもできます。

こうした盛り付け方や提供方法を工夫することも、パワーサラダを魅力的なスペシャリテにするためには重要なポイントです。
このように、レストランでパワーサラダを主食のメニューとしてポジショニングするならば、お客様が聞きたくなるようなサラダのストーリーが必要です。それがメニューの力だと思うのです。
外食店でパワーサラダをメニューに取り入れる時のポイントは、パワーサラダにこうしたテーマを決めてプロとして伝えたいストーリーを添えることではないでしょうか。

企画協力:オリーブプラン株式会社

2025/10/23時点