分けるよりも使わない工夫で
給食をアレルギーフリーに

食物アレルギーを持つ子どもたちが学校で食べるランチは、ほかの子どもたちと別に調理された給食や、弁当を持参するケースがみられます。そのためアレルギーを持つ子どもは、ほかの子ども達と同じメニューの学校給食を楽しむことが難しいのが現実です。今回は、アレルギーフリー給食を作ることで、全員で同じ給食を楽しむ時間に変える方法をご提案します。

食物アレルギー事故を防ぐための取り組み

一般的に、学校における食物アレルギー事故防止を徹底するため、教育委員会や学校、調理場における食物アレルギー対応に関する具体的方針やマニュアルが作成されています。作成の際に参考とする指針として、文部科学省が「学校給食における食物アレルギー対応指針」をまとめています。同指針を参考に、学校給食においてさまざまなアレルギー対策がすでに行われています。

同指針では、食物アレルギーは生命に関わる問題であるため、安全性を第一とした対応が行われています。また、親との面談によりアレルゲンを持つ食材の完全除去対応(子どもにその食材を提供するかしないか)を決めることも定められています。それにより、給食として提供する際の食材の検討や、給食の提供ではなく弁当を持参してもらうといった対応が求められているのです。

また、献立を考える段階から、使用頻度を検討する必要がある食材もあります。アナフィラキシーショックの重症度グレードが高くなりやすいそばや落花生については、給食での提供回数を極力減らすことが求められています。また、発症数が多い卵や牛乳、小麦、エビ、カニなどは使用している目的を明確にすること、使用していることがメニュー名からわかるように設定されています。また、1回の給食で複数の食材を利用しないようにし、対応をより単純にする取り組みもされています。

調理段階においても、原因食材を利用しない調理方法や原因食物が利用されていることが一目でわかるような調理方法をする必要とされています。また、アレルゲンの食材を除去している料理は、アレルギーを持つ子ども用に形状を変えるなど、誤食を防ぐ工夫もなされています。アレルギーを持つ子ども向けに、対象の食材を取り除いた給食を作る、あるいは特別メニューを用意するといった対策を取るケースも多くみられます。

全員が同じメニューを食べられる給食作り

先述の通り、アレルギーを持つ子どもたちへは、給食を通常のものと分けることで事故を防いでいます。

一方で、最初からアレルゲンとなる食材を使わない給食を作ることにより、ほかの子どもたちと同じ給食を提供する工夫をしている学校や幼稚園もあります。しかし、アレルギーフリーの給食を作る際に、単に食材を使わないと、メニューのバリエーションが少なくなったり、味が変わってしまう可能性があります。アレルギーフリー給食であるのと同時に、味の質を落とさず、全員が美味しいと満足いく工夫が必要になります。

代替食材の利用

ここで、活用してみたいのは、アレルゲンを持つ食材を代替食材に置き換えて調理する、という方法です。これにより、食物アレルギー事故を防止すると共に、子どもたち全員の給食に対する満足度を高めることにつながります。どのような食材が代替食材になるのか、またその利用効果をみていきましょう。

ノンエッグマヨネーズを利用するように、そもそもアレルゲン食材を含まない製品を利用することが対策の1つとなります。既製品の中に代替可能なものがない場合には、実際に現場で代替食材を使って調理する必要もあります。例えば、小麦の代わりに米粉、牛乳の代わりに豆乳、など類似の食材を用いることが挙げられます。

米粉は、パンへの利用はもちろんのこと、ハンバーグやつみれのつなぎ、揚げ物などのパン粉の代わりとしても利用できます。豆乳に関しては大豆アレルギーを持つ子どももいることから、利用が難しいケースもあります。しかし、牛乳の代替品はほかにも、ライスミルクやアーモンドミルクなどいくつか挙げることができます。

それ以外でも、つなぎとして小麦や牛乳が利用される料理の場合、ジャガイモやレンコン、豆腐などを利用する方法もあります。ハンバーグを作るにしても、溶き卵の代わりに片栗粉やすりおろしたジャガイモを利用したり、パン粉の代わりにマッシュポテトを利用するなど、さまざまな食材の利用や工夫をすることができます。

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美味しい見た目の追求

また、代替食材を用いることにより変わってしまう見た目を補うことで、アレルギーフリー給食の満足度を維持する工夫につながります。例えば、米粉を利用したパンなどは白っぽくなってしまうため、コーンミールを加えることで焼きあがりが小麦粉パンに似てきます。シチューなどの色やとろみが食欲をそそるメニューにも、ライスミルクと米粉などを使えます。牛乳と小麦粉で作った際と似た見た目・食感になり、美味しいアレルギーフリー給食として提供できます。

このように、代替食材を利用したアレルギーフリー給食を提供することで、子どもたちが同じ給食を食べることができるようになります。アレルギーを持つ子どもたちもみんなと同じ給食を食べることで疎外感がなくなり、学校生活がより楽しいものとなるでしょう。


まとめ

アレルギーフリー給食を作るためには食材の調達や調理作業で手間がかかってしまいます。しかし、同じく手間がかかる個別対応を行うのであれば、事故の完全防止につながり、子どもたちの学校での楽しみとなる給食を提供してみてはいかがでしょうか。

2017/12/19時点