銅冶勇人さんが目指す“CLOUDYが注目されない未来”と、ゴミ山の幼稚園

銅冶勇人さんが​目指す“CLOUDYが​注目されない​未来”と、​ゴミ山の​幼稚園

銅冶勇人さん第3回

前回は、銅冶さんの学生時代のお話やご両親からの教えなど、ルーツにフォーカスしたお話を聞かせてもらいました。最終回は、銅冶さんが考える今の日本の途上国支援に関する問題点や、これから目指す未来についてうかがいます。

※この記事はVoicyの対談の要約です。発言の意味を変えないように配慮して、一部省略・集約をしています。詳しくはVoicyの「 みんなにうれしいGREEN KEWPIEチャンネル 」をお聴きください。

銅冶勇人

銅冶勇人

どうやゆうと

アパレルブランドCLOUDY・NPO法人CLOUDY代表。2008年に慶應義塾大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。並行して2010年にアフリカで教育、雇用の創出、食料支援などを行うNPO法人CLOUDYを立ち上げる。2015年に会社を退職し、翌年株式会社DOYAを設立。アフリカの伝統的なファブリックをはじめ現地の手仕事、文化を生かすアパレルブランドCLOUDYを展開し、NPO活動との両輪で事業を行う。

変わるべきは​発展途上国ではなく​自分たち

現在、3ヶ月に1回のペースでガーナへ行かれているという銅冶さん。アフリカと日本の両方の現状を知っているからこそ感じる、アフリカ支援の今後の課題とは。

前田: 日本とアフリカを行き来しながらアフリカの支援をしている銅冶さんですが、途上国支援の課題ってどんなものだと思っていらっしゃいますか?

銅冶: いろんな形で“サステナブル”という言葉が一人歩きしているような、そんなビジネスがすごく多いのかなという風に思います。やっているだけになってしまっていて、本当に(途上国の)現場にある問題というものを解決できているビジネスはまだまだ少ないなという印象を受けますね。みなさんの中で「途上国を変えなきゃいけない」という思いがすごく渦巻いているように思うんですが、もしかしたら変わらなければいけないのは自分たちの方なんじゃないかなということを日々感じています。

前田: 確かに日本ではコロナ禍も経て、サステナブルという言葉がすごく一般化した側面がありますよね。それがいい部分もあれば、ちょっと一人歩きしているように感じる時もあるということですね。ファッション業界ではどうですか?

銅冶: 例えば今みなさんが購入されているような洋服の、大体60%が廃棄されているという数字が世界中のデータで出ています。廃棄されることを前提にビジネスが成り立ってしまっていることが1つの大きな問題であり、廃棄されるものがゆくゆくは海に埋め立てられたり、ゴミの山に積まれたり、そういった形で途上国にしわ寄せが行っているという事実も知らなければならないことかと思います。

前田: よく洋服を現地に贈ったりする活動を耳にすることがあるんですけれども。

銅冶: 今前田さんがおっしゃった通り、現地にお洋服を寄付しましょう、靴を寄付しましょうというのはよくあるプロジェクトだと思います。ちょっとだけ考えていただきたいんですが、仮に1万枚のTシャツをアフリカに寄付するというプロジェクトがありますと。この1万枚を送ることによって、一瞬の1万人の喜びにつながることは事実かもしれません。ただ、その1万枚分のTシャツ(が送られなければ買われていたはずのTシャツ)を作っている人たち、売っている人たちのお仕事を奪っていることになってしまうんじゃないかという考え方も、もしかしたらできるかもしれないと思うんですよね。よかれと思ってやっている自分のアクションが、実は現地の成長を逆に止めてしまうことになってしまっている。そういうことがいくつもあるということを、やはり頭の中に入れなきゃいけないと思いますね。

前田: その先にある、それ(支援)がどうなっていくのかという想像力を持つことはすごく大事ですよね。

銅冶: そうですね。やっぱり現地を知ること、現地の問題解決には何が必要なのかということを知ること。これは日常の中でもみなさんにできることなのかなと思います。

1つとして同じ柄のないアフリカンテキスタイルの洋服を着たガーナの女性たち(銅冶さんのInstagramより)

前田: 銅冶さんのInstagramを見ていると、一緒に出てくる現地の仲間たちってすごくおしゃれですよね。

銅冶: そうなんですよ。一人ひとりにオリジナリティがあって、自分が何を着たいかというのがすごく明確にあって。さっき寄付の話もしたんですけど、彼女たちに言われてハッとした言葉が、「私たちだっておしゃれをしたいのよ。穴が開いている服、穴が開いている靴なんて履く(着る)わけがないでしょ。そんなものを送らないで」。そう一人の女性に言われた時に、僕たちのやっていることやマインドって何か劣っている部分がすごくあるなと感じると共に、彼女たちの心から洋服やファッションを楽しみたいという気持ちは、僕たち以上に一人ひとりにちゃんとあるんだなということを感じさせてもらいました。

前田: 自分の行動で何が起きていくのかという想像をしっかりしながら、アクションを起こさなきゃいけないなって改めて感じました。

銅冶勇人

よかれと思ってやった支援が逆に途上国の成長を奪うこともあるんです

前田有紀

支援をした先を想像することは大事ですね

ひじきと​大豆の​まろやか​ごま白和え

ゲストにGREEN KEWPIEを使った料理を食べていただく「みんなにうれしいGREEN KEWPIEレシピ」のコーナー。銅冶さんへの3品目は、ごまの代わりに「植物生まれのごまドレッシング」を使った白和えです。果たして、お惣菜好きの銅冶さんの反応は?

前田: 銅冶さん、好きな食べ物はなんですか?

銅冶: 定食屋さんが大好きなんですよ。お米、おみそ汁、そこに大きなおかずと、小さな器にお惣菜がのっているのが。特にその小さな器のお惣菜が大好きでして。

前田: 定食屋さんはいいですよね。そんな銅冶さんにぴったりのメニューをご紹介します。題して、『ひじきと大豆のまろやかごま白和え』です。定食の一品にもありそうなメニューですよね。

銅冶: これはまた僕の大好きが凝縮したお惣菜です。大豆も入って栄養価(があって)、ヘルシー、いいですね。一人暮らしは、食生活にすごく偏りがあるんですよ。なのでこういうものが食べられるのはものすごくありがたいです。

前田: なかなか一人分でひじきを水から戻して作ったりはしないですよね。こちらはひじきや梅干しなどが入った白和えです。通常白和えにはごまを使いますが、こちらはGREEN KEWPIEの「植物生まれのごまドレッシング」を使うことで手軽に調理できるんです。では、食べてみましょう!

銅冶: いただきます。わぁ、おいしい。ごまの味が本当にしっかりありますね。香ばしいですよ。

前田: すりたてのごまの香りがすごくするのと、あとさやえんどうがシャキシャキしていますよね。おいしいです。

銅冶: またこの梅干しが入っているところが絶妙でございますね。

前田: そうなんですよ。たっぷりじゃなくて、チラッチラッと入っている感じがすごくバランスいいですね。この「植物生まれのごまドレッシング」はちょっと酸味があるタイプのドレッシングなので、食欲をそそるなっていうのは感じました。

銅冶: それもあるかもしれないですね。ドレッシングなのにオイリーな感じはそこまでしないというか、すごくヘルシーに食べられて。

前田: (サラダだけじゃなく)調味料として使えるというのも新しい発見でした。あと、ごまをよく切らしちゃうんですよ。ごまをかけたいなという時にストックがなかったりするので、ごまがない時にこれを使ったらささっと作れていいなと思いました。

銅冶: ドレッシングと一口に言っても、いろんなものに使えるんですね。これは一人暮らしにはなかなかない知識でございました。

前田: お昼や夜はどんなものを食べていますか?

銅冶: 夜は会食があったりちょっと偏りがあるので、お昼はサラダをなるべく食べるようにはしています。

前田: 野菜は好きなんですか?

銅冶: 野菜は好きなものと嫌いなものがはっきりしているんですが、好き嫌いせず、何でも食べるようにしています。でもそれには結構ドレッシングがキーになってくるので、何でもいいわけじゃないんですよ。やっぱりこのごまのドレッシングをたくさん使っていきたいと思います。

銅冶勇人

ごまの味がしっかりして香ばしいです!

前田有紀

ドレッシングにちょっと酸味を感じてまた食欲をそそりますね

ゴミ山の​中の​村に​幼稚園を​建設予定

サステナブルという言葉が一人歩きし、本当の意味で現地のためになるビジネスがまだ少ないという日本の課題を語ってくれた銅冶さん。ここからは、実際にNPO法人CLOUDYが今やっている活動や、今後の展望についてうかがっていきます。

前田: 銅冶さんが今取り組まれている新しいプロジェクトって何かあるんですか?

銅冶: いくつか進んでいることがあるんですけど、今年の年末から工事が始まる新しい学校があります。この学校を建てるのはガーナのアグボグブロシーという場所で、東京ドーム約30個分のゴミの山があるんですね。

前田: 東京ドーム30個分?

銅冶: すごく広大な面積にゴミの山があるんです。一面に現地の生活のゴミだけじゃなく、我々先進国から運ばれてきた電子機器などあらゆるジャンルのゴミが凝縮されていて、要は最終的にしわ寄せが行っている場所がそこなんですね。そのゴミの山のある場所に村が形成されているんですけど、ゴミを燃やして生きているので、(有害な燃焼ガスなどの影響で)その村の人たちの寿命は大体30代と言われていて。お金になるものを拾ってどうにか生活をしながら、(ゴミを)燃やして自分たちの寿命を縮めているという村に、新しく学校を建設する計画を立てています。

前田: 現状では、世界から集まったもの(ゴミ)が現地の人たちの未来を狭めてしまっているという、まさにそんな場所なんですね。

銅冶: そうですね。我々が毎日の生活の中で出しているゴミが、最終的にそのような場所に行き着いてしまって、そのゴミが結局誰かの寿命を縮めたり、環境を破壊したりしていることを僕たちもやっぱり知らなければいけないし、考えなければいけないと日々思いますね。

前田: そこではどんな学校を作りたいですか?

銅冶: 幼稚園と小学校を建設する予定なんですけれども、その村のお母さんたちから「絶対に幼稚園を作ってほしい」というニーズがとても高くて。その理由が、やっぱり小さなお子さんが側にいるとお母さんたちは働きづらいんですよね。働きやすい環境をお母さんたちは求めていて、それゆえに幼稚園を作るのを一番優先してほしいという声がたくさん上がっていたので、幼稚園からまずスタートしたいなと思っています。子どもたちがそこで学びを得たことによって、その村から自分たちが出るという選択肢を考えられるようになってほしいですし、また将来この村をどういう風によりよくしていけるかを考えられるような人材を育てていきたいなと思っています。

前田: 第1回でもお話しいただいたように、夢の選択肢がそこでもさらに広がっていくととても素晴らしいですよね。

銅冶勇人

幼稚園を建てる場所には東京ドーム約30個分のゴミの山があるんです

前田有紀

世界から集まったゴミが現地の人たちの未来を狭めてしまっているんですね

CLOUDYが​注目されなくなる​未来が​来て​ほしい

世界の子どもたちの未来がよりよいものになり、自分たちで発展させていく仕組みを作っていきたいと話す銅冶さん。最後に前田さんがどんな未来になるとうれしいかと質問すると、「CLOUDYが注目されなくなってほしい」という、ちょっと意外なお答えが返ってきました。

前田: ここまで銅冶さんのお話をうかがってきましたが、やっぱり重きを置いているのは、持続可能な形の支援をしていくというところなんですかね。

銅冶: そうですね。ずっと僕らがサポートをし続けるのではなくて、アフリカのみんなが自走していく、彼らだけで生きていけるような仕組みを作っていくことがとても大事だなと思います。僕たちCLOUDYがこれまで作ってきたスキームをこれからどういう風に広げていかなきゃいけないのか、ここが僕たちのこれからのミッションの1つになるかと思います。

前田: 私も本当にCLOUDYのアイテムが大好きで、持っているだけでかわいいというのもあるんですけど、誰かの幸せにつながっているということですごく自分も元気をもらえるんですよね。みなさんにも知ってほしいんですけど、CLOUDYのアイテムを買うとスマイルレポートというものがついてくるんですよ。そこでどれだけの給食になったか、どれだけの子どもたちの教育になったか、どれだけの人の雇用につながったかというのが可視化されているので、一緒に学ぶこともできます。私は日本でCLOUDYのアイテムを使うけど、そのことが現地に届いていると実感できるのでぜひ見てみてほしいなと思います。

銅冶: 店頭にスマイルレポート片手に親子でご来店くださる方が多くいらっしゃるんですけど、(その時は)うちのスタッフが即席授業みたいな感じで、合いの手を入れさせていただくこともあります。来店されたあるお母様から店舗にご連絡があって、「今子どもと一緒にお風呂に入っていたんですけど、子どもが湯船を見て、このお湯はアフリカに持っていけないの?と聞いてきたんです」と。子どもというのは本当にストレートに、かつスピード感を持って感じているんだなというのをすごく感じましたし、少しでも何かのきっかけにCLOUDYがなれているのかなというのはとてもうれしかったですね。

銅冶さんが「何よりのモチベーション」だと話す子どもたちの笑顔(銅冶さんのInstagramより)

前田: 現地だけでなく日本のお子さんたちの未来にもつながるような活動ですね。では最後に銅冶さんにうかがいます。銅冶さんにとって未来がうれしいものになるために必要なことは何だと思いますか?

銅冶: シンプルにCLOUDYが注目されなくなること。これがうれしいにつながるかなと思います。

前田: ちょっと逆説的ですよね。

銅冶: 今CLOUDYはアフリカで活動していますが、この“アフリカで”という時点でみなさん「すごいですね、素敵ですね」とすぐに(そういう)言葉が出てくるんですよね。日本のみなさんの固定観念の中にあるアフリカのイメージにおそらくネガティブなことが多くて、我々がアフリカと言っただけで素晴らしいですねと言ってもらえるようなマインドになってしまっているけど、(途上国支援が)当たり前になっていかないといけない。CLOUDYという僕たちの活動が世の中のみなさんにとってもすごく身近なものになって、当たり前のように自分ができる身近なアクションになっていかなければいけないと思うんですね。その時にCLOUDYがこれまで作ってきた、いろんな形での教育や雇用、健康というスキーム自体を、これから世界中の人たちにどんどん真似していってほしいです。僕らのスキームは、おそらくこれから社会問題を解決する中で大きなインパクトを持つだろうと思うので、もっともっと僕らのスキームを真似して、世界中の社会問題を解決できる方法をみんなで手を取り合いながら試していってほしいなと思います。その結果としてCLOUDYの活動が全く注目されなくなったら、それが当たり前になっているということだと思うので、そんな未来を目指していけることが一番うれしいです。

前田: トップバッターのCLOUDYの活動がスタンダードになっていく未来、ぜひ見てみたいです。私はいつもCLOUDYのカバンを持っていると、ワクワクしてかわいくて楽しくてポジティブな気持ちになるんですけど、それが今銅冶さんが言ったような未来につながっていくと思うと、ますますワクワクしますね。この番組では普段GREEN KEWPIEを使ったレシピを食べて、すごくおいしいって(言いながら)楽しく番組を進めているんですけど、それがまた未来の食につながっていくと思うとそれもすごくワクワクするので、やっぱり出発点って“楽しい”とか“おいしい”とか、人がポジティブに感じるところから始まるんだなって改めて感じました。

銅冶: CLOUDYも「これほしいな」「誰かにあげたいな」と、そんなことから関わってもらって、その奥にこんなことにつながっているんだなとか、そんなことを感じてもらえるといいなと。何事もきっかけをどこで提供できるかが大事だと思うので、楽しかったりうれしかったりするのが最初のきっかけになるのはとても素敵なことだと思います。

銅冶勇人

CLOUDYが注目されなくなったら当たり前になっているということだと思うので、そんな未来を目指せるとうれしいです

前田有紀

トップバッターのCLOUDYがスタンダードになった未来、ぜひ見たいです!

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前田有紀
ナビゲーター/前田有紀
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