極限に達すると“野生状態”に。ヤマケンさんがレース前に植物性食品を摂る理由

極限に​達すると​“野生状態”に。​ヤマケンさんが​レース前に​植物性食品を​摂る​理由

山本健一さん第2回

前回はヤマケン(山本健一)さんに、これまでのスポーツ経歴や、山を走ることで感じるうれしさについてお聞きしました。第2回は、アスリートの食事情について。普段の食事から、レース前の食事の変化、それによる心身への影響についてうかがっていきます。

※この記事はVoicyの対談の要約です。発言の意味を変えないように配慮して、一部省略・集約をしています。詳しくはVoicyの「 みんなにうれしいGREEN KEWPIEチャンネル 」をお聴きください。

山本健一

山本健一

やまもとけんいち

トレイルランナー

1979年、山梨県生まれ。信州大学教育学部を卒業後、 山梨県立韮崎工業高等学校の教員に。教員時代にトレイルランニングと出会い、2008年に第16回日本山岳耐久レース(通称ハセツネ)優勝。2012年、ウルトラトレイル・マウントフジ(通称UTMF)3位。同年にグランレイド・デ・ピレネー優勝。2013年、アンドラウルトラトレイル2位などの輝かしい成績を残す。総距離約160〜170kmの100マイルレースを主戦場とする日本を代表するトレイルランナー。愛称は「ヤマケン」。

普段の​食事は​家の​前の​畑で​採れた​野菜が​中心

山梨県韮崎市にお住まいのヤマケンさん。豊かな自然を有するこの地域は野菜や果物の農業が盛んですが、どのような食生活をされているのでしょう。

前田: 普段、朝ごはんはどんなものを食べていますか。

山本: 隣に住んでいる両親が畑と田んぼをやっていまして、かなり多くの野菜を作っています。そこでいつも必要な野菜を収穫して、まず起きたらグリーンスムージーを作るのが僕の仕事です。

前田: へぇ〜。何を入れているんですか?

山本: 決まって入れるのは小松菜、チンゲン菜、それからセロリ。これをうちで作っていて。それにバナナときな粉と、豆乳とか牛乳とか水とか。そして大好物の1つであるはちみつを入れて、ブインと(ブレンダーを)回して飲んでいます。

前田: 野菜だけじゃなくきな粉や豆乳も入れると、たんぱく質もそのスムージー1つで摂れちゃうんですね。

山本: そうですね。なんかいいもの摂ってるなみたいな、朝イチからそういう気持ちになれますね。

前田: お子さんたちも飲んでくれますか。

山本: 娘が3人いるんですけど、真ん中の娘以外は飲みます。だから今、4人で飲んでいますね。真ん中の娘はなぜかいらないって。

前田: ちょっと野菜に苦手意識があったりするんですかね?

山本: うーん、なんか飲みたくないって言うんですよ。すごく大きなブレンダーで作っているので、みんなの分もあるんですけどね。僕はビールジョッキでスムージーを飲んでいます。

前田: ビールジョッキで!(笑)朝から本当に栄養たっぷりだなと思うんですが、スムージー以外にはどんなものを食べるんですか?

山本: スムージーを飲んだら、その次に生野菜を食べるんですよ。これも家で採れた野菜を食べるんです。今はきゅうりが多いですし、あとはレタスとか、そういうものをむしゃむしゃ食べます。(対談の収録は8月)

前田: すごいですね、全部採れたてですもんね。私も今、家族の食を見つめ直す中で、季節のものであることと、近くの地域で作られていることってすごく大事だなと思っているんですよ。ヤマケンさんは旬の畑のものをその場で収穫してスムージーにできちゃうわけですから、本当に理想的です。

山本: ありがたい環境に感謝ですね。

前田: 逆に買いに行く食材ってどんなものがあるんですか。

山本: 妻以外の家族はみんなスポーツをしていて、お肉を食べたがるので、お肉と魚と牛乳とかをスーパーでは買っています。買うものは大体そのぐらいですね。山梨なので、果物もたくさん夏は出回っているんです。果物も僕たちは買うことはしなくて、(知り合いから)家に届くんですよ。今朝も巨峰を食べてきました。

前田: いいですね〜。本当に羨ましいです。買う食材が少ないっていうのもすごくいいなと思いました。

山本健一

両親の畑で採れた野菜を毎朝スムージーに。ありがたい環境に感謝!

前田有紀

旬のものをその場で収穫して食べられる環境、理想的です

レース前に​なると​植物性オンリーの​食生活に

家の前の畑で採れる野菜を中心に、肉や魚、果物などバランスのいい食事を摂られているヤマケンさん。話題はそんな普段の食生活から、レース前のアスリートとしての食事情へ。

前田: レースの前になると、食生活って変化していくんですか?

山本: 不思議なんですけど、僕の場合は自然と気持ちが変わってきて、海外レースに行くと飛行機に乗った瞬間から体がベジタリアン風になるというか、植物性の食べ物を欲するようになりまして。それまでは普通のものを食べているんですけど、そういうところが変わってきますね。

前田: 頭で考えて野菜を多くしようってことじゃなく、感覚的に植物性のものを取り入れたくなってくるんですね。それはどうしてなんですかね?

山本: 自分なりにですけど、内臓や脳への負担を動物性と植物性とで比べると、やっぱり動物性はちょっとヘビーで、植物性はライトな感じがするんですよね。これも自分の感覚なので、他の人はわからないんですけど。

前田: 海外だとたんぱく質を植物性で摂るのって難しいのかなと思うんですけど、どんな風に工夫されていますか?

山本: 日本から豆腐を持っていきます。パックの豆腐をいっぱいカバンに詰め込んで。1回、豆腐を詰めたカバンがロストバゲージしまして、その時はすごく困りました(笑)。

前田: そうですよね!洋服はなんとかなるけど、豆腐だけは手に入らないですもんね。

山本: その時は何よりも困りましたね。「豆腐が来ない!」って。

前田: お豆腐は調理したりスムージーにしたりされるんですか?

山本: 豆腐はそのままシンプルにしょうゆをかけていただきます。

前田: 簡単に食べられて、栄養も補給できていいですね。あとは、他に食で気をつけていることってありますか?

山本: これも自然にというか無理なくなんですけど、アルコールとカフェインをやめました。アルコールは2009年に、初めて海外のレースに参加した打ち上げの時からやめました。

前田: 打ち上げの時ってすごく具体的ですね。

山本: (大会が)フランスだったので、打ち上げではワインを飲むぞという気持ちでいたんですけど、そこでトレーナーさんとかに「このまま飲まないでいってみたら?」って(言われて)。試合前はもちろん飲まないんですよ。その打ち上げで飲もうと思っていたんだけど、トレーナーさんに「このままもうやめてもいいんじゃない?」って言われてそのまま飲まなかったら、「あれ、飲まなくてもいいな」みたいな。そこでやめまして、今もずっと飲んでないです。でも本当に好きだったんですよ。自分の結婚式では生ビールを50杯飲みました。

前田: えー!すごいお酒好きな方って感じがしますね。

山本: 体育会系だったので。よく結婚式って(飲み切れないお酒をいれるための)バケツがあるじゃないですか。バケツを先輩に隠されて、(お酌されたお酒を)全部飲みました。2次会でまたさらに飲んで、そしたらぶっ倒れて(笑)。二次会のお開きの記憶がなくて、気が付いたらベッドの上にいました。

前田: それはぶっ倒れますね!今は全く飲まれていないってことで、ちょっと恋しくなったりとかはしないんですか?

山本: しないんですよ、それが。もう気持ちがいらないと思っているんで。本当に大好きだったお酒なんですけど、不思議ですね。

前田: 頭で考えて健康のためにやめるとかではなく、心地いいことを探っていったら自然とそうなっていったというのが面白いですね。

山本: これもトレーナーさんから、「お酒をやめたら世界に友達がたくさんできるよ」って言われたんですよ。というのは多分、体のことを考えて(酒をやめたら)パフォーマンスもアップして、いい走りをしてトップで走って、そしたら友達がたくさんできるってことを言っていたと思うんですけど、でもそれを真に受けて「あ、友達欲しいな」という風に思ってやめました。

前田: 面白いですね。

山本: 変ですね(笑)。

山本健一

レースのために飛行機に乗った瞬間から体が植物性の食べ物を欲します

前田有紀

心地いいことを探ったら自然とそうなっていくのが面白いですね

レース前に​おすすめ!​まるで​モッツァレラ?​な​豆腐サラダ

ゲストにGREEN KEWPIEを使った料理を食べていただく「みんなにうれしいGREEN KEWPIEレシピ」のコーナー。2品目は、ヤマケンさんにとって欠かせない食材である豆腐をモッツァレラチーズ風にアレンジしたサラダをご用意しました。「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」と、ゆずこしょうのハーモニーが絶妙な一皿です。

前田: 野菜好きのヤマケンさんに豆腐とアボカド、トマトを使った一皿をご用意しました。題して『レース前におすすめ!まるでモッツァレラ?な豆腐サラダ』です。

山本: お〜。すごいのが登場しましたね!

前田: モッツァレラチーズに見えるのが豆腐なんですけれども、塩麹に漬けて脱水したものになっています。さっぱりしていながら、まるでモッツァレラチーズのような食べ応えも楽しめます。そして、「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」とゆずこしょうのハーモニーが絶妙なので、その辺りも楽しんでもらえたらと思います。見た目の色合いもきれいで、本当にカフェで出てきそうな一品ですよね。

山本: おしゃれですね。(トマトと豆腐を)一緒に食べちゃおう。おいしい!見た目もよくて、さらにおいしいですね。

前田: モッツァレラチーズと、この(トマトとアボカドの)組み合わせはよくありますけど、チーズをお豆腐にするっていうのは面白いアイデアですよね。

山本: その名の通り、まるでモッツァレラチーズですね。

前田: チーズの濃厚な味わいも私は大好きなんですけど、豆腐にするとすごくさっぱりしていて、心地よく体に入ってくる感じがしますね。

山本: いつも僕は豆腐にはしょうゆをかけるシンプルなことしかしてないので、これから家でも遠征先でも真似して作ってみたいなと思います。

前田: 遠征先でトマトやアボカドも手に入りそうですもんね。ちょっとお皿に盛って、遠征先で食べるのもいいかもしれないですね。ヤマケンさんには事前にGREEN KEWPIEの商品をお送りしましたが、召し上がってみていかがでしたか?

山本: まず「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」を野菜にかけてみましたが、めちゃくちゃおいしかったですね。それからパスタも好きなので、パスタソースの「(植物生まれの)カルボナーラ」とか「(植物生まれの)ボロネーゼ」を家族でいただいたんですけども、みんなから大好評でしたね。

前田: 手軽ですし、味もしっかりついている感じで濃厚ですよね。

山本: 植物生まれといってもしっかりコクもあって、とてもおいしくいただきました。

山本健一

その名の通り、まるでモッツァレラチーズですね

前田有紀

豆腐だとさっぱりしていて心地よく体に入ってくる感じがしますね

レース中に​極限に​達すると​“野生状態”に

遠征先でも楽しめそうなGREEN KEWPIEを使ったメニューに「真似したい」と笑顔のヤマケンさん。引き続き、話題はレース前の植物性中心の食事について。食事の内容を普段と変えることで、どんな影響があるのかさらにうかがっていきます。

前田: ヤマケンさんはレース前になると、自然と植物性の食品を欲していくというお話がありましたが、心身にはどんな影響がありますか。

山本: まず気持ちの波がフラットになる感じがするんですよね。あくまでも自分の感覚なんですけど。やっぱり動物性だと、内臓とか脳への負担も大きいと思うんですよ。頑張って消化しようと脳が働いて、内臓が働く。だけど、植物性だとそれがやや少ないのかなって自分では感じるんですよね。それで気持ちが少し楽になって、体もリラックスできるという風に感じています。

前田: 体が消化に向かっていかずに、レースの方により集中していけるんですかね。

山本: そんなイメージですね。やっぱりレースって準備がほぼほぼ(100%)なんですよね。特に100マイルレースですと、1年ぐらいかけて準備していくのでコンディションが一番で、当日はいかにリラックスして楽しんで走るかっていうところにかかっていると思います。事前にそうやって自分の心と体を落ち着けておくことが すごく大事なんじゃないかなという風に感じています。

海外遠征中にもよく作るというお得意のグリーンスムージー(写真提供:藤巻 翔)

前田: よくアスリートの方にお話を聞くと、“ゾーンに入る”という表現をされる方もいらっしゃると思うんですけど、ヤマケンさんにとってゾーンってどんなものですか。

山本: これをゾーンというかわからないんですけど、僕の場合は100マイル(のレース)で長く一晩中走るじゃないですか。そうするとやっぱり体力も奪われて眠さとかも時々来るんですけど、そういうものが極限に達して、その時に体がリラックスして楽しんでいると、体が吹っ切れたように楽になる時があるんですね。

前田: 走り続けて辛いはずなのに、楽になる瞬間がある?

山本: はい。足場が悪くて真っ暗なんですけど、もうそこが平らなように走れたり、やたら速く走れる時があって、それを僕の言葉で“野生状態”と言っています。野生の動物って、森の中でライトもついていないのに猛スピードで走ることができるじゃないですか。それと似ているなと思って。自分はそれを野生になったって言うんですけど、それを時々感じられますね。特に夜中に多いです。

前田: 夜中なんですね。夜走るってだけでちょっと怖いのかなとか、周りも見えなくて私だったらドキドキしてしまいそうだけど、そういったことも感じなくなるくらい集中していて、 ただただ野生になったように走り続けられる瞬間があるんですね。

山本: 最高に楽しい瞬間ですね。

La PICaPICA 109km超山岳系レースにて。カメラマンの待つ場所に明るいうちに着きたかったというヤマケンさんが「セーフ!」と言っている一幕(写真提供:藤巻 翔)

前田: レース前とレース中はすごく集中して臨まれているのがわかったんですけど、終わった後の食事ってどんな感じなんですか?

山本: 走る前とはガラッと変わりまして、ジャンクフードとかお肉とか、急に動物性が欲しくなるんですよ。その要因は色々あると思うんですけど、1つは(レース直後は)体脂肪率もすごい下がっちゃうんですよね。大体いつも5%切っちゃうぐらいまで体脂肪が落ちて。それを元に戻そうっていう心の働きなのかわからないですけど、必ずポテトとかピザとか食べたくなるし、(現地の)アパートに帰るとお肉を焼きます。まるっきり別人のような食生活を欲します。

前田: えー!すごいですね。好みとかではなく、体が必要なものをその都度取り入れていて、何が必要かは感覚でわかっていく感じなんですね。

山本: もう、脳が欲しいって言っています。

前田: 面白いですね。

山本: 変ですね(笑)。

山本健一

極限に達した時に体がリラックスしていると、体が吹っ切れたように楽になります

前田有紀

ただただ野生動物になったように走り続けられる瞬間があるんですね

目に​見える​生産者が​作った、​信じられる​ものを​食べられるのが​うれしい

“野生状態”という興味深すぎるお話を、目を丸くしながら聞く前田さん。そんな究極の集中状態になるには様々な要因がありますが、やはり植物性食品を摂ることが大きいようです。普段から野菜をたくさん食べるヤマケンさんが、豊かな食生活を通して得ているうれしいこととは。

前田: 最後に、改めてヤマケンさんにうかがいます。ヤマケンさんは日常的にお野菜や植物性食品をたくさん摂っていらっしゃいますが、それはどんなうれしいことをもたらしてくれますか。

山本: 私の場合は本当に恵まれた環境で、自分の両親が家で野菜を作ってくれているんですけども、目に見えるところで、目に見える生産者が安心できるものを作ってくれて、それを口にできることにすごく感謝だなと思います。自分は安心できるものを食べているんだっていう気持ちにもなりますし、それによって体もよりリラックスしたり、動きやすくなったりします。信じられるものをいつも食べられることがとてもうれしいなと感じます。

前田: 自分にとって信じられるものを食べられるって一番うれしいことですよね。

山本健一

安心できるものを食べていると、より体がリラックスして動きやすくなります

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前田有紀
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