誕生物語

2000年に発売した
キユーピー 深煎りごまドレッシングの
誕生物語をご紹介します。
※ 2023年11月公開
 ※内容、所属、役職等は公開時のものです

「キユーピー 深煎りごまドレッシング」はすりたてのごまの香ばしい風味をいかした、コク深い味わいのドレッシングです。2000年に発売して以来、たくさんの方に親しまれ、今では売上ナンバーワンとなりました。誕生に至るまでの道のり、おいしさへのこだわり、これからの展望について、二人の開発担当者に話を聞きました。

  • インテージSCIのドレッシング平均購入規模金額より推計(2000年1月~2022年12月)
研究開発本部
食創造研究所
山本 英彦
Yamamoto Hidehiko

1988年入社。ドレッシング開発部に配属となり、深煎りごまドレッシングの開発を担当。その後営業部門等を経験し、幅広い商品開発に取り組む。調味料全体の責任者を経て、現在は上席研究員としておいしいドレッシングの開発をめざし続けている。

研究開発本部
食創造研究所 市販用開発部
吉田 かな美
Yoshida Kanami

2018年入社。ドレッシング開発部に配属となり、家庭用ドレッシング、小袋調味料などの商品開発に取り組んでいる。また、山本と共に、深煎りごまドレッシングのおいしさを今後も継承していく役割も担っている。

011990年、ドレッシング市場の変化を受け、
圧倒的においしいドレッシングの開発がミッションに。

深煎りごまドレッシングが生まれたきっかけを教えてください。

山本:深煎りごまドレッシングが発売される10年ほど前の1990年頃、他社のノンオイルドレッシングタイプが登場して、ドレッシング市場に大きな変化が訪れました。それまでは「ごま」を使った醤油ベースの分離液状ドレッシングが人気でキユーピーが市場をリードしてきましたが、ノンオイルが勢いを増し、たちまち後塵を拝する立場となりました。それをきっかけに「圧倒的においしいドレッシングを開発する」というミッションがはじまります。
「今売れている商品に対抗できるものを」、「今人気の味・素材で上回るものを」といった声が、社内の様々な部署からあがる中、私たちドレッシング開発部は方針が定まらない、試行錯誤の暗くて長いトンネルを過ごすことになりました。開発に対する主体性を見失いかけていたとき、キユーピーが研究を重ね続けてきた素材「ごま」にスポットが当たったのです。過去に「ごま」を使った様々な商品のノウハウを集め、キユーピーにしかできない究極のごまドレッシングをつくるという、商品戦略がようやく生まれました。

02日本人に親しみのある「ごま」と向き合い、
研究を積み重ねてきたキユーピー。

なぜドレッシングに「ごま」が使われたのでしょうか。

山本:ドレッシングの基本原料であるオイル&ビネガーに、日本人の嗜好にあう「醤油」を組み合わせることによって、日本のドレッシング市場は大きく成長しました。キユーピーも、日本人好みのドレッシングをつくるために、「醤油」に加え「ごま」や「ごま油」を使った商品開発に取り組み、お客様から好評を得ていました。「ごま」は、様々な料理に使えて万能であり、健康機能面でも着目される優れた素材と言え、この「ごま」を使って良い商品を作ろうと考えました。

03深煎りごまドレッシングは、どのように生まれたのか。
ヒントになったのは、淹れたてコーヒーの香り。

趣味のコーヒーを自家焙煎やこだわりのエスプレッソマシンで楽しむ山本

深煎りごまドレッシングは、それまでのごまドレッシングと何がちがうのでしょうか。また、開発のヒントになったコーヒーの魅力について教えてください。

大きな特徴は二つあります。まず、「ごまの香り」を最大限に活かす製法にしたこと。もう一つはごまの焙煎度を「深煎り」にしたことです。

私は、開発当時から「コーヒー」が大好きでした。コーヒーは苦い飲み物ですが、焙煎鮮度の高いコーヒー豆を、挽きたて・淹れたてで飲むと、時間が経ったコーヒーにはない“力強い香り”、そして“ほのかな甘い香り”さえ感じられます。究極においしいごまドレシングを目指すなら、コーヒーと同様、煎りたて・挽きたての香りにこだわったものにしなければならないと思いました。
そこで、製造工程中に豆をすりつぶす製法を選択したいと考え、工場に協力いただき、試行錯誤の末、すりたての香りをそのままドレッシングに封じ込める特殊製法にたどり着くことができました。

さらに焙煎度についても、様々な条件で試作検討を繰り返しました。
自家焙煎のコーヒー店でも様々な焙煎度にわかれたコーヒー豆がならんでいますが、産地による違いもさることながら、焙煎度の違いがコーヒーの風味を決定づける最大の要因だと考えています。

1990年代に日本に上陸したシアトル系コーヒー店の豆の特徴は「深煎り」でした。人気の「カフェラテ」は、深煎りのコーヒー豆が使われ、濃くて苦いエスプレッソをたっぷりのミルクで割ってつくります。深煎り豆を使った香り高いコーヒーの魅力が、マイルドなミルクによって引き立てられている、それがカフェラテのおいしさなのです。

「ごま」のドレッシング開発においても同様に、ごまを深煎りにして細かい乳化状態を作ることで、カフェラテのようにマイルドでありながらも、ごまの風味がしっかり発揮されるドレッシングが実現できると考えました。しかし、ごまを深煎りする工程は、容易ではありませんでした。

04ごまの一粒一粒に込められた情熱と、なめらかさを追求した製法で、これまでにないドレッシングが誕生。

ごまを深煎りする工程で苦労したのはどんなことでしょうか。

山本:深煎りするときに直面するのが、焦げの問題です。
「大量のごまを均一に、焦げるギリギリまで焼く」ことの難しさは、実際に自社工場で直火釜を使ってごまを50キロ程度炒った時に実感しました。あるものは生焼け、あるものは丸焦げといった焼きムラができてしまうのです。
一粒一粒を完璧に同じ条件で火入れすることは不可能なのではと思いましたが、私たちには良質なごまを扱う原料メーカーとのつながりがありました。そのお陰で開発中は、理想的なごまと最適な焙煎度合いを、共に追い求めることができました。粒がそろった新鮮なごまを、新鮮なうちに工場へ届けてもらう、といったリクエストも引き受けてくれました。

吉田:実際に原料に使用しているごまは、粒ぞろいで香ばしい、とても良い香りがします。
原料のごまを食べてみると、そのままでも風味豊かでとてもおいしく、試作をすると香ばしい香りが試作場に広がります。キユーピーの商品開発の考えで「良い商品は良い原料からしか生まれない」というものがあります。深煎りごまドレッシングのおいしさは、技術が詰まったこだわりのごまがあってこそだと試作のたびに実感し、まさにその考えを体現している商品だと思います。

05すりたてごまの香りをもっと届けたい。
深煎りごまドレッシングは、まっすぐ進化し続ける。

未来の深煎りごまドレッシングの姿をどのように考えていますか。

吉田:深煎りごまドレッシングは、「香り」にこだわっているのが一番の特徴だと思っています。商品を変えていくというよりは、今ある良さを大事に守り、そのうえで、香りの良さを向上させていくために、今後も焙煎度をはじめとした製法にこだわって研究していきたいです。コク深い味わいだからこそ、サラダはもちろん、様々な料理に使いやすいと思うので、自分好みに使っていただき、これからも多くの方に親しんでもらえると嬉しいです。

話を終えて開発中の
ドレッシングを囲む山本・吉田