専門家からのアドバイス

高齢者のお食事について

家族が大変にならない介護食づくりを
豊富なラインアップから選べる楽しさ
豊富なラインアップから選べる楽しさ
家族が大変にならない
介護食づくりを

介護が必要な方をはじめとした高齢者の食事では、どんな点に気をつければいいでしょうか。医療法人社団福寿会福岡クリニックの中村育子先生は、自宅で介護を受けている高齢者に訪問栄養指導を行い、食事に関するアドバイスを続けています。そんな中村先生に、介護と食事についてお話をうかがいました。

記事の内容や専門家の所属は取材当時のものです。


在宅介護の現場で家族が抱える悩みとは

管理栄養士
中村 育子先生

年齢とともに、食べ物をかんだり飲み込んだりする力は弱くなっていきます。当院では、患者さんのご自宅を訪問して栄養指導を行なっています。対象は、通院が困難なため在宅診療を受けている方で、摂食嚥下障害や栄養不足の方、生活習慣病などで食事の管理が必要な方です。ご自宅を訪問すると、介護をしている方から将来の不安や経済的不安などいろいろな悩みを聞きますが、中でも毎日の食事づくりについて悩みを抱えている方が多くいらっしゃいます。

管理栄養士
中村 育子先生

お話を伺っていると、食事をおいしく食べてもらえているのかという不安、また食べてほしいというご家族の思いを強く感じます。味覚の衰えや難聴、認知機能の低下などでコミュニケーションが困難になり食事の感想を言えない患者さんに対して、ご家族は用意した食事をどう感じているのか分からず不安になるようです。ただ、愛する家族が自分のために食事を用意してくれて、色々な話をしながら介助してくれるので、「きっと喜んでくれていますよ」とお伝えしています。少しでも、ご家族の方に安心してもらいたいですね。


介護食づくりは、支える家族が大変にならないように

高齢者や食べる力が弱くなった方の食事づくりは、常食から柔らかい食事に変更するため大変です。なにがなんでも1日3食全て手作りしようとして、倒れてしまうくらい自分のことを後回しにしてしまう方もいます。家族がひと息つける時間をつくり、しっかりと体調を整えることが重要です。

介護をする方は忙しく、自分の食事の準備になかなか時間をかけられないため、偏った食事をとりがちです。お団子やカステラなどのおやつで簡単に食事を済ませる方もいるのですが、しっかりとごはんを食べて自身の健康を保つことが重要です。毎日、そして長期的に続く介護だからこそ、介護をしている方自身の健康管理も大切に考えてほしいですね。

家族が自分の時間を確保できるように、市販の介護食をうまく使うことをおすすめしています。キユーピーの介護食「やさしい献立」を使えば、手軽においしい食事を楽しむことができますよ。食事づくりの際にフードプロセッサーやミキサーを使う手間が省けますし、容器に移して温めるだけで完成するから、とても便利です。料理を短縮してできた時間で、介護をする方がゆっくりお茶を飲んだりして心身ともに休む時間を作ってほしいですね。体調を整え、心にも余裕ができて、いい関係を続けられると思います。


市販品を組み合わせて栄養バランスのよい献立に

最近、介護をしている方から栄養バランスについての質問をよく受けます。特に男性には、それまでほとんど料理をしたことがなく、食材やメニューの組み合わせに悩む方がいらっしゃいます。そういった方々には、一から作るのではなく、「やさしい献立」など市販の介護食を取り入れることをおすすめしています。

野菜とたんぱく質を組み合わせることで栄養のバランスをとることができますが、お肉料理は手作りして「やさしい献立 なめらか野菜」を合わせたり、コンビニで買ったカット野菜にお肉の主菜メニューを合わせるなどでもよいのです。患者さんの間では、「やさしい献立」のハンバーグや肉じゃが、すき焼き、鶏だんごが人気です。栄養バランスを考えた1週間の献立をお伝えすると、みなさん、食品の組み合わせ方がわかるようになり自然と日々の栄養バランスが整っていきます。

さらに、ショウガ汁を加えてショウガの華やかな香りを出したり、ゴマ油をきかせるなど、短時間でできるちょっとしたアレンジもオススメです。食事は香りとともに色彩も大事。トマトケチャップやトマトピューレなどで赤を入れたりすると、食欲に結び付きます。ただお皿に並べるだけではなく、ひと工夫することで、おいしく季節感を味わいながら食べることができます。また、レパートリーを増やすために、はんぺんやお豆腐に介護食をソースのようにかけるといった「アレンジレシピ」も患者さんに紹介しています。こうした工夫によって「初めてのメニューだ、おいしそう」と感じてもらえ、食べる意欲につながります。


元気なうちから介護食を試してみよう

年齢とともに、どんなに元気な方でもかむ力が弱くなります。必要になってからではなく、元気なうちに食べておくと、いざ介護食が必要になったときもあせることなく取り入れることができると思います。「やさしい献立」は約60種類もラインアップがあるので、いくつか選んで試してみるといいと思います。介護食は味が薄いといった先入観をなくすことができますし、一度口にしたことがあるのとないのでは全く違います。自分の好みの味や具材の大きさなど食べやすさを知っておくために、今お元気な方も、一度介護食を試してみてはいかがでしょうか。

POINT

家族が大変にならない
介護食づくりを

  • 市販の介護食をうまく取り入れて、手軽に栄養バランスを整えよう。
  • 介護をする家族も自身の健康管理に気をつけて。
  • 介護食に一手間加えることで、レパートリーを増やせる。

かむ力と飲み込む力にあった
食事をとりましょう

歯科医師 戸原 雄先生

食をテーマにした講演会

食生活と健康についての正しい情報の提供を目的として、1984年から開始しています。
高齢化が進み、単身世帯が増加する現代社会において、留意すべき事柄をわかりやすく説明する講演会として、食生活と健康についての正しい情報提供のための講演会を開催しています。