みんなの介護 お悩み座談会

前編: 前編:素材を活かしたおいしさ

自宅で介護をするとき、どんなことに気をつけて食事の準備をするとよいのでしょうか。自宅で家族を介護中の女性3人が集まり、訪問管理栄養士の中村育子先生を招いて座談会を実施。
介護者のみなさんの実態や悩みに対して、中村先生からアドバイスをいただきました。
座談会前編では、介護の食事について取り上げます。

※記事の内容や専門家の所属は取材当時のものです。

(写真左から)
石坂さん、藤平さん、中村先生、安井さん

石坂さん
石坂さん

約1年前から「要介護5」の母を自宅で介護
家族の状態:嚥下機能が弱まり、医師からはソフト食をすすめられている。ペースト状の食事を手作りしているが、本人は嫌がっているので、少しでもかみ応えのあるものを食べさせてあげたい。

藤平さん
藤平さん

約8年前から「要介護2」の義理の母を自宅で介護
家族の状態:食事は「歯ぐきでつぶせる」くらいのやわらかさ。本人が嫌がるため、入れ歯を作れていない。食事は完全にやわらかいものを手作りしている。

安井さん
安井さん

約10年前から「要介護4」の母を自宅で介護
家族の状態:認知症でまわりの人のことをあまり認識できていない。介護を自宅で行なうことに限界を感じ、現在は施設で夕食まで食べてから自宅に戻る生活。


自宅での介護

中村先生今日はよろしくお願いします。訪問管理栄養士の中村育子と申します。普段は通院困難で栄養状態に問題を抱えている方のご自宅に伺って食事指導を行なっています。
早速ですが、今日は介護の食事についてみなさんのお話しを伺いたいと思います。事前にご自宅で、「やさしい献立」の食べやすさの段階が異なる4種類を試していただいたそうですが、どうでしたか?

石坂さん「鶏だんごの野菜煮込み(容易にかめる)」は、見た目が普通の食事に見えるのがいいですよね。おいしそうに見えるので、母も食べたそうにしていました。
見た目で何のお料理かわかるほうが母は喜びます。

鶏だんごの野菜煮込み

やわらかく仕立てた鶏肉だんごを白菜、豆腐、大根、にんじんなどと和風だしで煮込みました。


見た目も楽しむ食事

中村先生おいしそうに見えるかどうか、大切ですよね。「やさしい献立」の「容易にかめる」区分は、見た目は普通食だけど、口の中に入れるとやわらかく調理されていることがわかります。素材ごとにカットサイズや下ゆでする時間を変えて作っているからなんです。
普通食は食べづらいけれど、食事は見た目も楽しみたいという方には、「容易にかめる」をぜひ試していただきたいですね。

安井さん母は「やわらかおかず 肉じゃが(舌でつぶせる)」をさらにスプーンでつぶしてあげたところ、おいしいと喜んで食べていました。
私も試してみたのですが、個人的には「おじや 親子丼風(歯ぐきでつぶせる)」もおいしかったです。味がしっかりとついているのがいいですよね。
母は普通食から刻み食を経て、今は食材をさらに細かく刻んだりペースト状にしたものを食べています。口から食事を摂れる間はしっかりと食事をさせてあげたいと思っています。

やわらかおかず 肉じゃが

やわらかく仕立てた牛肉をじゃがいも、玉ねぎ、にんじんと甘辛く煮込みました。

藤平さんうちの母も、「やわらかおかず 肉じゃが」をおいしそうに食べていました。

中村先生「やわらかおかず 肉じゃが」は患者さんの間でも人気があります。
食事のアドバイスとしては、食べるときに「今日は肉じゃがだよ~」みたいに声をかけると、自分が何を食べるのかがわかり、安心感につながります。

藤平さんレトルトの介護食を使うのは初めてでしたが、だしの味がしっかりきいていて、思ったよりも自然な味でした。簡単に用意できるので、時間がないときに助かります。


おいしい介護食

安井さん正直なところ、レトルトはおいしくないというイメージがありましたが、実際に食べてみるとおいしくてびっくりしました。
私は在宅で約10年間介護をしているのですが、とにかくつらかった最初のころに「やさしい献立」を知っていたら!と思います。
食事を絶対に自分でつくらないと!って思っている方って、いますよね。私自身がそうでした。手作りしないと罪悪感を覚えるみたいな感じで。

中村先生レトルトはレンジで温めただけでけしからん!みたいに感じる人もいるのですが、簡単に準備できて味もおいしく、使いやすいんです。介護される方にとって、おいしさはとても大事です。
今回はみなさん、「やさしい献立」のおいしさを実感されたことと思います。堂々と使っていいんです。うまく活用して食事の準備が少しでも楽になれば余裕ができて、介護している家族とのコミュニケーションもうまくできるようになるはずです。
多くの方が、自分が介護食を用意することになるとは思っていないですよね。
男性だと、それまでほとんど料理をしたことがないという方も多いですし。私が患者さんのご自宅を訪問すると、「やさしい献立」を利用している方が多くいらっしゃいます。
これくらいやわらかい食事を自宅で作るには、料理上手な人でも1時間はかかって大変です。なのでぜひ、介護者の方には「やさしい献立」を活用することをおすすめします。みなさん実際に食べてみて、レトルトの介護食の味や利便性を実感されたようですね。
次は、介護食にまつわる悩みをお聞きします。


後編: 介護食にまつわるお悩み相談

食をテーマにした講演会

食生活と健康についての正しい情報の提供を目的として、1984年から開始しています。
高齢化が進み、単身世帯が増加する現代社会において、留意すべき事柄をわかりやすく説明する講演会として、食生活と健康についての正しい情報提供のための講演会を開催しています。